マニアリブート

マギアレコード、アニメ遊戯王etc

マギレコ イベスト+MSS チャート

※アニレコからの新規をある程度想定

※選定基準はあくまでも筆者の主観であり、あくまで筆者の作品観に立脚したメモであることを断っておく(予防線)

※あえて細かい解説は入れない

※「後追いでザックリ追体験しやすいように」を重視して選定している。あくまでザックリ

 

①メインストとの関係が強めのイベストまとめ

※箇条書きのものは各項目ごとに履修推奨順に上から下。横に(※スペシャル)を付けたものはイベストではなくスペシャル。ログインストーリー等を指す

※「その他」に入れたのは、メインストとの直接的な関係は薄いが人間関係の解像度にそれなりに影響しそうなもの、何かしらの形で後にメインに拾われた要素があるもの、前フリとしての意味合いが強いもの等、メインストの全体像への影響がやや強めなものをザックリ。基準は人によって違いそうなのであくまでザックリ(予防線)

 

 

【1部】

1部6章後推奨:みたまの特訓 いろは・やちよ編

1部9章後推奨:Whereabouts of the feather~羽根の行方~(※前提MSSは後述)

1部10章後推奨:ユメミルサクラ

★その他:マジカルハロウィンシアター~1日だけの魔法少女劇団~(いつでも)、呼び水となりて綻び(7章後)、駆けだしメイド十七夜 闊達自在!(いつでも)、復刻:耳を撫でて彼岸の声(10章後)

 

【1.5部】

巣立ちは空を見上げて

環になって神浜(※スペシャル)→新たな息吹より

深碧の巫

Crimson Resolve~深紅の決断~

★その他:散花愁章(※前提イベストは後述)

 

【2部】

2部2章後推奨:オマエにずっと手を振る

2部3章後推奨:ガールズ・イン・ザ・フッド

2部4章後推奨:ディペンデンスブルー

2部8章後推奨:灰色革命

2部11章後推奨:サヨナラ・ストレージ

★その他:センチメンタルを見つめて(※スペシャル)(3章後)、復刻:祈りと弔いのハロウィン城 ~生者は惑い死者は黙する~(4章後)、那由他さん家の平和な日常(5章後)、海は時をつないで(※スペシャル)(6章後)、ドリームハロウィンフェスタ ~アリナ先輩!いい子になるの!~(7章後)、時女拾遺物語 ~初日の出を呼びませう!~(8章後)、うららとナイショと送別会(10章後)

 

【ピュエラ・ヒストリア】

ヒストリア後推奨:パラダイスシフト~帰還の物語~、オモイデ・ドロップス

★その他(※全て2部後ヒストリア前):闇色ハロウィンは恋の色!? ~繋げて・恋の東西最前線!~、Winter Recollection~まだ透明な私たちより~幻の物語、サンタクロースには涙を見せない(※スペシャル)

 

②1部登場サブキャラ関連シナリオまとめ

※箇条書きのものは各項目ごとに履修推奨順に上から下。MSS=魔法少女ストーリー。横に(※スペシャル)を付けたものはイベストではなくスペシャル。横に(※衣装)を付けたものは衣装ストーリー

※箇条書きに入れたのが各キャラの主演回。「その他」に入れたのは客演回のうち何かしら特筆する要素があると判断したもの(そのキャラの人間関係に関わる、出番は多くないがキャラの本質に触れている、ファンサ濃いめ、有名ネタetc)をザックリと抜粋。出番を全部挙げると長大になるのであくまでも抜粋

※主演回と客演回のどっちかの判断はかなりフィーリングに依っている。主演回に入れたが内容薄く感じるシナリオもあるし、客演回だが注目に値すると感じるシナリオも少なくない。基準に迷った結果としてどちらにも入れなかった中にも、個人的には好きだったり重要かもしれなかったりする各キャラ登場回はある。あくまでもザックリ(予防線)

※衣装ストは基本かなり尺が短いのと後からのアクセスが難しいため原則として客演回に入れ、実質アラカルトバレンタインで長尺のバレンタインストーリー2021シリーズのみ主演回に入れた(このように分類は様々な要素から総合判断して行っているので基準が一貫しないように見えるかも)。バトルミュージアムは入れたがミラーズストーリーは省略。1部8章・1部10章・1部ED・2部ED等の、「ほぼ皆いる」やつも省略。他にも例外処理は後から加えるかも

※Chiki氏のマギレコキャラクタストーリー検索やpixiv百科など、他の人のまとめと併せて使うといいかも

 

 

梨花れん】

綾野梨花MSS→五十鈴れんMSS

復刻:君と綴る日記

アラカルトバレンタイン~みんなの気持ちの届け方~

アラカルトバレンタイン2nd ~あの子がこの日の主役なら?~

聖夜に刻む1ページ ~君と、ここから~

梨花・れん クリスマスverMSS

バトルミュージアム 五十鈴れんの「記憶」

★その他:巴マミMSS、佐倉杏子MSS、五十鈴れん私服(※衣装)、都ひなの冬服(※衣装)、五十鈴れん冬服(※衣装)、波打ち際のリボン、都ひなの水着(※衣装)、五十鈴れん水着(※衣装)、綾野梨花冬服(※衣装)、八雲みかげMSS、黒江 水着verMSS、まさら・こころ花嫁verMSS

 

【まさここ】

加賀見まさらMSS、粟根こころMSS

復刻:あの日の一番を越えて

ウォーミングバレンタイン~あなたに想いが届くまで~(※スペシャル)

あしたの幸せに花束を

まさら・こころ 花嫁verMSS

★その他:加賀見まさらアウトドアウェア(※衣装)、粟根こころアウトドアウェア(※衣装)、美樹さやかMSS、アラカルトバレンタイン~みんなの気持ちの届け方~、江利あいみ冬服(※衣装)、眞尾ひみかMSS、CROSS CONNECTION~魔法少女すずね☆マギカ~、加賀見まさら水着(※衣装)、粟根こころ水着(※衣装)、加賀見まさら冬服(※衣装)、粟根こころ冬服(※衣装)、全神祭で遊ぼう! ~私たちの小さな休み時間〜、Memorable Flower ~魔法少女すずね☆マギカ~、七色夏模様 〜ノートに記された日常〜

 

【あやしず】

保澄雫MSS→毬子あやかMSS

桑水せいかMSS

Whereabouts of the feather~羽根の行方~(※雫とあやかのMSSが前提だが、令と郁美のMSSも先読み推奨)

笑顔の?ハロウィンライブショー!(※スペシャル)

センチメンタルを見つめて(※スペシャル)

2部4章→2部アナザー4章→バレンタインストーリー2021保澄雫冬服(※衣装)→2部7章

★その他:鹿目まどかMSS、美国織莉子(or呉キリカor千歳ゆま)MSS 、八雲みたまMSS、みかづき荘のSummer Vacation、Magia Clash! ~魔法少女リリカルなのは Detonation~、保澄雫ハロウィン(※衣装)、毬子あやかハロウィン(※衣装)、ウワサアクアリウムへようこそ ~思い出は玉手箱に託して~、全神祭で遊ぼう! ~私たちの小さな休み時間〜、毬子あやか冬服(※衣装)、My Only Salvation ~魔法少女おりこ☆マギカ~、黒江 水着verMSS、まさら・こころ 花嫁verMSS

 

【令郁】

観鳥令MSS、牧野郁美MSS

Whereabouts of the feather~羽根の行方~

万年桜のウワサMSS

ウワサアクアリウムへようこそ ~思い出は玉手箱に託して~

万年桜のウワサ 水着verMSS

2部4章→2部アナザー4章→バレンタインストーリー2021保澄雫冬服(※衣装)→2部5章→2部6章→2部アナザー6章→2部7章

★その他:1部9章、牧野郁美メイド服(※衣装)、環になって神浜(※スペシャル)→新たな息吹より、保澄雫ハロウィン(※衣装)、2部1~3章、桜の轍、恵萌花MSS、観鳥令水着(※衣装)、牧野郁美水着(※衣装)、センチメンタルを見つめて(※スペシャル)、復刻:祈りと弔いのハロウィン城 ~生者は惑い死者は黙する~、観鳥令ハロウィン(※衣装)、Only Dreamers ~寓話は少女の夢を見る~、2部8章、2部10章、黒江 水着verMSS、錦木千束MSS

 

【アザレア組】

そしてアザレアの花咲く

静海このはMSS、遊佐葉月MSS、三栗あやめMSS

散花愁章(※そしてアザレアの花咲くに加え、ななか組のMSSとバイバイ、また明日~神浜大東団地の記憶~も前提)

2部アナザー1章

はじまりは夢を重ねて

このは・葉月MSS

★その他:眞尾ひみかMSS、全神祭で遊ぼう! ~私たちの小さな休み時間〜、2部6章、2部アナザー6章、三栗あやめ水着(※衣装)、百江なぎさ 水着verMSS

 

【ななか組】

常盤ななかMSS、志伸あきらMSS、純美雨MSS、夏目かこMSS

そしてアザレアの花咲く

みたまの特訓 ななか編

愉快なハロウィンへご招待!(※スペシャル)

散花愁章

みたまの特訓 美雨編

2部アナザー1章

サヨナラ・ストレージ

オモイデ・ドロップス

★その他:鹿目まどかMSS、暁美ほむら 眼鏡verMSS、巴マミMSS、深月フェリシアMSS、矢宵かのこMSS、春名このみMSS、遊佐葉月MSS、相野みとMSS、CROSS CONNECTION~魔法少女すずね☆マギカ~、夏目かこハロウィン(※衣装)、空穂夏希ハロウィン①(※衣装)、Rumors in Disguise ~魔法少女すずね☆マギカ~、聖夜に刻む1ページ ~君と、ここから~、志伸あきらクリスマス(※衣装)、恵萌花MSS、はじまりは夢を重ねて、2部6章、2部アナザー6章、2部アナザー7章、夏目かこ水着(※衣装)、御崎海香MSS、2部8~9章、常盤ななか冬服(※衣装)、純美雨冬服(※衣装)、Memorable Flower~魔法少女すずね☆マギカ~、七色夏模様 〜ノートに記された日常〜

 

【団地組】

バイバイ、また明日~神浜大東団地の記憶~

相野みとMSS、伊吹れいらMSS、桑水せいかMSS

散花愁章

バレンタインストーリー2021伊吹れいら冬服(※衣装)

彼方より、あなたへ〜神浜大東団地の黄昏〜

れいら・せいかMSS

★その他:駆けだしメイド十七夜 闊達自在!、みかづき荘のSummer Vacation、2部アナザー2章、全神祭で遊ぼう! ~私たちの小さな休み時間〜、2部6章、2部8章、和泉十七夜 常闇verMSS、闇色ハロウィンは恋の色!? ~繋げて・恋の東西最前線!~、相野みとハロウィン(※衣装)、バトルミュージアム 和泉十七夜の「記憶」

 

【水名組】

阿見莉愛MSS、胡桃まなかMSS、梢麻友MSS、史乃沙優希MSS

ほわほわ少女頑張る!~待って、それ誤解です!~

主役はいつだって私!(※スペシャル)

アラカルトバレンタイン2nd ~あの子がこの日の主役なら?~

沙優希ステップアップ仕る!ですぅ~

トリック☆トラブル☆学園祭~パクっと解決!つむぎにおまかせあれ!~

バレンタインストーリー2021阿見莉愛冬服(※衣装)

★その他:暁美ほむら眼鏡verMSS、佐倉杏子MSS、胡桃まなかコック服(※衣装)、復刻:サマトレ!~火に消えた夏の宝~、史乃沙優希水着(※衣装)、若菜つむぎMSS 、2部アナザー3章、梶の葉伝説物語 ~揺れる思いは、重ねて魅せて~、2部アナザー10章、七色夏模様 〜ノートに記された日常〜、阿見莉愛水着(※衣装)、梢麻友水着(※衣装)、千秋理子水着(※衣装)

 

【ささあす】

美凪ささらMSS、竜城明日香MSS

みたまの特訓 明日香編

ウォーミングバレンタイン~あなたに想いが届くまで~(※スペシャル)

明けまして竜突猛進!

竜城明日香 新春龍神verMSS

★その他:鹿目まどかMSS、深月フェリシアMSS、木崎衣美里MSS、志伸あきらMSS、マジカルハロウィンシアター、ほわほわ少女頑張る!~待って、それ誤解です!~、美凪ささら冬服(※衣装)、竜城明日香冬服(※衣装)、トリック☆トラブル☆学園祭~パクっと解決!つむぎにおまかせあれ!~、2部アナザー4章、2部アナザー10章

 

【みゃーえみ】

都ひなのMSS、木崎衣美里MSS

綾野梨花MSS

アラカルトバレンタイン~みんなの気持ちの届け方~

みたまの特訓 アリナ・ひなの編

アラカルトバレンタイン2nd ~あの子がこの日の主役なら?~

みたまの特訓 衣美里編

2部4~9章

★その他:美樹さやかMSS、都ひなの冬服(※衣装)、呼び水となりて綻び、波打ち際のリボン、都ひなの水着(※衣装)、五十鈴れん水着(※衣装)、観鳥令MSS、木崎衣美里冬服(※衣装)、万年桜のウワサMSS 、環になって神浜(※スペシャル)→新たな息吹より、聖夜に刻む1ページ ~君と、ここから~、木崎衣美里クリスマス(※衣装)、桜の轍、恵萌花MSS、万年桜のウワサ 水着verMSS、センチメンタルを見つめて(※スペシャル)、観鳥令ハロウィン(※衣装)、バレンタインストーリー2021保澄雫冬服(※衣装)、鏡が映すほんとうの私、桐野紗枝MSS、2部1~3章、2部アナザー4章、2部アナザー10章、黒江 水着verMSS、錦木千束MSS、明けまして竜突猛進!

 

【他・個別に】

★空穂夏希:空穂夏希MSS、暁美ほむら 眼鏡verMSS、江利あいみMSS、バレンタインエール(※スペシャル)、愉快なハロウィンへご招待!(※スペシャル)、空穂夏希ハロウィン①(衣装)、Rumors in Disguise ~魔法少女すずね☆マギカ~、奏遥香MSS、みたまの特訓静香編、バレンタインストーリー2021時女静香冬服(※衣装)、2部アナザー5章、牧カオルMSS、時女拾遺物語 ~初日の出を呼びませう!~、Memorable Flower~魔法少女すずね☆マギカ~、闇色ハロウィンは恋の色!? ~繋げて・恋の東西最前線!~、空穂夏希ハロウィン②(※衣装)

★春名このみ:春名このみMSS、佐倉杏子MSS 、相野みとMSS、駆けだしメイド十七夜 闊達自在!、ウォーミングバレンタイン(※スペシャル)、春名このみ冬服(※衣装)、Homecoming ~佐倉杏子の3日間~、Winter Recollection~まだ透明な私たちより~幻の物語、春名このみクリスマス(※衣装)

★千秋理子:千秋理子MSS、千秋理子のぶきっちょでもいいですから、アラカルトバレンタイン2nd ~あの子がこの日の主役なら?~、千秋理子冬服(※衣装)、神浜KAWAIIコレクション(※スペシャル)、アシュリー・テイラーのジャパニーズホラーはどこデスカ!?、アシュリー・テイラーMSS、八雲みかげMSS、美樹さやか 波乗りverMSS、入名クシュMSS、七色夏模様 〜ノートに記された日常〜、千秋理子水着(※衣装)、アシュリー・テイラー水着(※衣装)、バトルミュージアム 和泉十七夜の「記憶」

★矢宵かのこ:矢宵かのこMSS、巴マミMSS、復刻:君と綴る日記、暁美ほむら 水着verMSS、Rumors in Disguise ~魔法少女すずね☆マギカ~、日向茉莉MSS、トリック☆トラブル☆学園祭~パクっと解決!つむぎにおまかせあれ!~、時女静香MSS、八雲みかげMSS、時女静香 初日の出verMSS、矢宵かのこ冬服(※衣装)

★江利あいみ:江利あいみMSS、加賀見まさらアウトドアウェア(※衣装)、アラカルトバレンタイン~みんなの気持ちの届け方~、江利あいみ冬服(※衣装)、五十鈴れん冬服(※衣装)、Rumors in Disguise ~魔法少女すずね☆マギカ~、奏遥香MSS、梨花・れん クリスマスverMSS、加賀見まさら冬服(※衣装)、Memorable Flower~魔法少女すずね☆マギカ~

★眞尾ひみか:眞尾ひみかMSS、みかづき荘のMerry Christmas、和泉十七夜MSS、ウォーミングバレンタイン(※スペシャル)、2部アナザー2章、八雲みかげMSS、鏡が映すほんとうの私、和泉十七夜 常闇verMSS、バトルミュージアム 和泉十七夜の「記憶」

 

③もう少しラフなまとめ

※タイトル通り。①②をもう少しラフに簡潔に概要化した補足。筆者の主観による作品観がよりハッキリ出る

※知識のない状態で①②だけ見せられても、「分量多……こわ……近寄らんとこ……」になってしまうかもしれない。そうなった場合に参考にできるようザックリした指針として置いておく。別にそうならなかった場合はこの項は無視しても構わない

 

【メイン関連イベスト】

メイン軸以外のサブストーリーの中でサブ縦軸の感が強く後にメインにも合流するのが、大きく分けてかりん関連・十七夜関連・雫関連・ななか関連の4つ。

ユメミルサクラ→巣立ちは空を見上げて→環になって神浜→新たな息吹より、は神浜マギアユニオン結成までの経緯。深碧の巫・Crimson Resolve・ディペンデンスブルー・灰色革命は2部の各グループの結成イベ。

オマエにずっと手を振る・ガールズインザフッドは2部で新たに出てきたサブ縦軸。

 

梨花れん】

梨花MSS→れんMSS→復刻:君と綴る日記→アラカルトバレンタイン2nd梨花編→バトルミュージアムれん編、主要な物語性はこのラインだと思う。マミMSSやみかげMSSも梨花の良いとこが出てて個人的に好き。

【まさここ】

まさらMSS→こころMSS→復刻:あの日の一番を越えて→あしたの幸せに花束を→まさここMSS、主要な物語性はこのラインだと思う。その他だとすずねイベント1弾・3弾で重要な役回りを演じている。

【あやしず】

雫MSS→あやかMSS→羽根の行方→笑顔のハロウィンライブショー、基本的な物語性はこのラインだと思う(センチメンタルを見つめて以降の2部要素については現時点では保留)。まどかMSSやせいかMSSもキャラの本質語ってる度高め。せいかMSSは人間関係の出発点でもあるし。

【令郁】

令MSS→郁美MSS→羽根の行方まであやしずと被ってて、令と万年桜の関係の出発点が描かれているのが万年桜MSS、2部要素なしの主演回ではウワサアクアリウムが代表的(2部要素はやはり現状では評価を保留せざるを得ない)。特に令は1部終了後、人間関係のハブとして機能しているような役回りが多い。

【アザレア組】

そしてアザレアの花咲く→散花愁章→はじまりは夢を重ねて、で看板イベストが3つもあり大体これで完結している(本人たちのMSSは実装イベストの後日談)。他はあやめかこフェリの話が多め。

【ななか組】

看板張る機会は少ないが神浜の中堅的なポジションで各々の付き合いもあり普段の出番は多い(アザレア組と逆)。初期のMSSからの伏線は散花で概ね解消してしまったもののその後も瀬奈帆奈関連で重点機会があり、すずねイベントの担当にもなってるのでまた呼ばれそう。特にすずねイベ1弾は影の主役。

【団地組】

バイバイまた明日→彼方よりあなたへが本人たちの物語。アザレアななか組orあやしずor十七夜のどれかと一緒に出てくることが多い。駆けだしメイドで十七夜と親しくなって以降、2部からは十七夜を頼りにしている東の魔法少女代表的なポジションが多め。

【水名組】

主演回を順番に見ていくのがいい気がするが、それらの集大成的ポジションであるトリックトラブル学園祭と2021莉愛冬服衣装ストが特に爽やかで出色の出来。水名と栄総合は学園単位での繋がりが強い。

【ささあす】

エミリーと一緒に相談所メンバーとして出てくるか、明日香が竜神館の持ち主or水名の芸人ポジで単独で出てくることが多め。明日香がサブキャラ初の単独限定実装となったが、イベストの明けまして竜突猛進!はささあすペア寄りの話。

【みゃーえみ】

梨花れんみゃーえみ4人での出番もあるが、CPで出るより各々単独での登場が多いか。エミリーは相談所の主・みゃーこは神浜中央の年長者として関わる人間関係がかなり広く、特にみゃーこは間接的なものも含めると神浜全体に与えた影響がかなり大きそう。

【他・個別に】

夏希は時女関連・あいみはまさこことの絡みがある他、すずねイベントに呼ばれていることが多い。理子はアシュリー登場後はアシュリーとペアに近い扱い。ひみかは団地組同様に2部からは十七夜との絡みが主。

 

(2024/3/15更新)

 

雑記(マギレコ):2023.5~6 バトルミュージアムれん編、まさら・こころ花嫁ver関連

 

kumota-hikaru.hatenablog.com

 こちらの記事の続き。

 現行のイベスト等を追っていく過程で、また何かしらの特筆したいテーマが出てきたら追加していく。

 

①バトルミュージアム 五十鈴れん編

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 この「スッと自然に出てきてスッと染み入る配慮の質感」こそ、マギレコ最初期からずっとそこに在る横軸話の強みなんだよね……

 流れるように察して先回りしてくれて、甘えた側が負い目を感じないようにさえ計らってくれる。

 梨花や観鳥さんに典型的に見られる横軸話での“お姉さん”キャラの質感、私(筆者)にとって最も交換不可能性を感じるマギレコの特徴の一つ。

・それはさて置き、れんの話として見ると、f:id:kumota-hikaru:20230731202448j:image
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 自らの初心に戻ってやりたいことを見つける、周りが教えてくれた優しさを与える側になりたい、自らの経験あっての自分だからできることを見つけたい。

 どれも「願いを見つける」魔法少女の物語として極めて王道的な文脈だし、すっきりと理屈は通っている。これらに近い文脈をやろうとして失敗していた感の漂う今年2月のバレンタイン(くろ・月出里関連)のリベンジの印象も受ける。

 ただ、最初に挙げた梨花の描写が理屈以上に自らのあり方で「日常の中に自然と存在する優しさ」を体現していたのと比較すると、れんの方はあくまでも理屈オンリーの話という印象がある。

 れんの決意を具体化する(具体的にどういう資質を活かして誰にどういう寄り添い方するかを示す)描写やそれを可能にする見通しは特になく、全体としてはそこそこの話という感触。果たして同じ自殺志願者という括りでそこまで一般化できるかor一般化するのは簡単か、もある。

 

②まさら・こころ花嫁ver関連(あしたの幸せに花束を、まさここMSS) f:id:kumota-hikaru:20230731204931j:image
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 イベスト(あしたの幸せに花束を)のラストのここさぁ……

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 最初期のこころとまさらのそれぞれのMSSで触れられた、「相手のどこに惹かれたか」への回帰なんだよね……

 最終回で1話の再演するやつ……

・イベストの方はやはり全体的に理屈っぽさに寄り過ぎている感も少しあったのだが、「結婚」というテーマを扱うからこそ「人と人との断絶」「すれ違い」に焦点を当てる必要があるのは納得するしかないし、上記の通りラストの清涼感がとても良かった。

 (同性・異性を問わず)「結婚=幸せ」「結婚=人生のゴール」価値観にならないようにしつつ、結婚を否定するわけでもなく当人たちの努力によって断絶を超えていける可能性を示す。ヘテロ規範っぽくなるのは当然避けるしソロウェディング等にも触れておく。簡単なようでこれだけのことを全部こなすのにはかなり繊細な手つきが求められると思う。

・その上で、どちらかというとイベストよりもMSS(まさここ花嫁verのMSS)を語る方に主眼を置きたい。イベストが「よくできた最終回っぽい」話なのを踏まえた上で、その後日談のMSSは「最終回じゃない」ことを示す話だし、イベストと同じテーマを扱いつつも「あり方で語る」ことをより重点しているからだ。

 まぁ勿論あざとい要素の多さもあるが……
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 序盤ずっとこういうイチャつきとぶっ飛んだギャグに振った話をしていたのが(勿論これはこれで楽しいし筆がノってるのも感じるしこれが無いとメリハリつかない)、気付けばイベストと同様に「人と人との断絶」「すれ違い」の話になっているところに根っからの真面目さを感じる。

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・まさここMSSの特筆すべき点は、「ペア同士の横の繋がり」がかなり有効に活かされているところである。

 個々のペアが独立にイチャイチャして既視感のある光景見せてるだけ、ではなく、今まで絡みのなかったペア同士の横の繋がりを個々のペアの物語性活かしながら新たに開拓していき、その中から個々のペア内の関係性の意義も再発見していく方向性。

 この場合、同じ「どれだけ仲の良い二人の関係でも必ず存在する断絶」というテーマを、主役のまさここと去年10月のハロウィンで登場した新キャラの壮晴で共有させている。

 気持ちが逸りがちなこころと思ったことを本当にそのまま言うまさらで(結婚を模したイベントを経た)今でもすれ違いに直面し続けるが、だからこそ付き合い始めで皆に見守られている壮月晴海と同じ目線で同質の問題に向き合えるという構図に落とし込み、それぞれのペアの閉じた関係だけだと描きにくかった次元へスムーズに話を進めているのだ。

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 思ったことを(特段の配慮を加えず)本当にそのまま口に出すまさらの性質は必然的にすれ違いの原因になるが、こころがまさらに惹かれたのもまさらのそういう個性である以上、二人の個性を保ったままその二人なりの最善を見つけることで断絶を乗り越えていくしかない。お互いの断絶への自覚と具体的な歩み寄りの意志がちゃんと描かれている。

 また、

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 同じ「断絶」というテーマについて、まさここと壮晴に加えあやしずの物語性もさりげなく活かされている。

 相手の好きなものがわかるか競争であやかが壮月と同じ間違え方をしたのはわざととも天然とも取れるが、どちらにせよ(互いの断絶にかなり自覚的でなお一緒にいる擬似幼馴染的な関係なので)間違えることをお互い気にしないし気にする必要がない。

 どれだけ強度のある関係でも相互不理解はあって当然だし関係の形は人それぞれなので、相手のことがわかるか競争には意味がない。そういう全体の結論を自分たちのあり方で先取りして暗示している(ラストでも率先してまさここに花を持たせようとしている)。

 それまでの二人の物語で積み重ねたものを今までとは違う形で外向きに活用する。ここにもペア同士の横の繋がりを重点している効果が出ている。
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 「同じテーマを共有できる対等な友人」兼「一致団結して危険から遠ざけ守るべき存在」という、この話全体を通しての壮晴のポジションは、「それぞれの魔法少女が個人として背負ったテーマの深掘り」と「魔法少女が持つ、日常を守ろうとするヒーローとしての側面の強調」の両方に一役買っていたと思う。

 マギアレコードはあくまでも魔法少女の物語であり魔法少女を大切にする話であるべきなので、魔法少女をさしおいてこの二人を単体でネタにしてどうというのは無いのだが、サブストーリーにおける緩やかな縦軸にもなり得るこういう役回りであれば、従来と違い非魔法少女一般人キャラにグラを付けた意味もしっかり感じられる。

 全体として日常性に重点を置いたマギレコの横軸話の新たな可能性を感じられるエピソードだった。

 

 

 

雑記(マギレコ):2023.4~5 ピュエラヒストリア ヴィーク編・チベット編

 マギレコ。

 正直2部後半以降、特に2部11章からピュエラ・ヒストリア初期にかけてはモチベがただ下がりしていた。メインストーリーは勿論のこと、メイン外のイベストさえも、作品全体を取り巻く「“救ってあげる”の絶対化への自省の無さ」や「断絶を取り上げる意義の軽視」に引っ張られているように見えた。

 ……のだが、ピュエラ・ヒストリア3回目のヴィークのワルキューレ編を境に流れが変わってきた。続くピュエラ・ヒストリア4回目のチベットラクシャーシー編、まさら&こころ花嫁ver関連(イベスト「あしたの幸せに花束を」、まさここMSS)と、3回連続でかなり良い感触が来ている。これが傾向の変化の兆しであるならば本当に嬉しいし、そうでなくてもこの感触を手放したくないので、それぞれのシナリオについて感じたことを箇条書きでまとめていきたい。

 まずこの記事においてはピュエラ・ヒストリア3回目と4回目(以下ではそれぞれ北欧・チベットと略したり略さなかったりする)について書き、次の記事でまさここ関連及びその少し前のバトルミュージアムれん編についてまとめる。その後も良い感触が来たらその都度感想を記録しておこうと思う。

 

①ヴィークのワルキューレ

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・「売れないバンドマンの語る夢みたいな話に本気で入れ込んでしまい、腎臓売って得た高いギターを唐突に押し付けてきて、勝手に夢の実現へのロードマップを作り説教しながらケツを引っ叩いてくる面倒くさ彼女(大意)」という評を見たことがある。

 概ねその通りだと思う。だからこそ歴史ものでありつつ本質的には時代を問わない普遍性のある話になっている(もちろん戦争や奴隷制度が当たり前の時代を扱うことで出口のない悲惨な状況に説得力を与える意味はちゃんとある)。

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 この後のチベット編もそうだが、「ここではないどこかへ行きたい」「こんな出口のないところに居たくない」というキャラクターの渇望がシナリオの底力になっている。

・オルガとガンヒルトはクリア報酬メモリアでそれぞれ「夢を見る姉」「夢を追う妹」と評されているが、本質的には二人とも「夢を追いたいが、一人だけで夢に本気になれるほどの強さはない」同じタイプなのではないかと思う。途中からガンヒルトはオルガの夢を叶えると称して自分のやりたいことをやっていたわけだが、単独で自分の夢を追う強さを最初から持っていたならオルガの夢をわざわざ立てて副リーダーをやりたがる必要はなかった。

 ただ、それならばオルガ自身の夢を叶える能力を伸ばそうとするように動くべきだった……とは思いつつも、f:id:kumota-hikaru:20230629234104j:image
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 ガンヒルトの言っている通りで、この時代にオルガの優しさに沿った形で(誰かを踏みつけにせずに)奴隷から成り上がったり金持ちになったりするなど凡そ不可能ではないか? とも思う。最終的に二人ともそれぞれに希望と後悔を抱えた幕引きとなるし、どう行動するのが正しかったのか誰からも明示はされない。見ていて息の詰まる出口のない時代の空気が伝わってくるし、この点に歴史を扱った意味があると思う(これを現代舞台でやろうとするとそれなりの工夫が必要になってくる)。

・派遣されたミスドの倫理観が一貫してちゃんとしていたのも見ていて安心感があった。
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 現代さえも消滅させかねない歴史改変を避けるべきというのも当然あるが(ヒストリア直前の5周年や12章末でもわざわざ大きくアピールしていた小石先輩の存在を考えたらなおのことだ)、それ以前にそもそも歴史を安易に「救済」の対象にすべきではない。ここにちゃんと触れているだけで一定の信頼がおける。f:id:kumota-hikaru:20230630052900j:image
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 干渉したい気持ちを抑えつつ努めて冷静になろうとする、二人の物語の主軸や歴史の大きな流れに影響を及ばさない範囲で最終的にはそっと手を貸す。

 「単に歴史へのリスペクトがない万能の救済者気分を拗らせてるだけ」にも、「単に情がないだけ」にもならないよう、最初から最後まで注意深く綱渡りをしている印象だった。

・北欧とチベット後半の展開は全体的に似た点が多く、それぞれまどマギ最終回のまどかの決断を別側面から切り取った着地点に向かう物語になっている。チベット後半が最終回まどかの「世界から顧みられる機会を自ら手放した自己犠牲救済者」の側面に焦点を当てたものだとすれば、北欧は「やりたいことに悩んできたのが旅の果てに自らの願いを見つけた少女」の側面を、まどマギ原作とは違う形で描き出そうとしたものだと思う。

 

チベットラクシャーシー編f:id:kumota-hikaru:20230630015242j:image
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中盤のここからの……

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 ラストのこれさぁ……f:id:kumota-hikaru:20230630015600j:image
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 潤みつの「虹のふもと」の話を思い出すよね……

 というか北欧も含めてずっと虹のふもと(夢の果て)を追い求める話してるよね……ヴァルハラを目指すのもシャンバラを目指すのもそういうことだから……最初に思い描いていた夢そのものは叶わなくても、何かを目指し続けているうちに最初に思い描いていたものとは異なる到達点を得ている……

・ぶっちゃけた話、北欧と違いイベスト後半以外で出てくる要素に関しては妙に方向性がとっ散らかっていてあんまり評価できない。

 ヘルカとドルマの二人にはっきり軸を絞っているイベ後半と比較すると、イベ前半は話の構成要素がとっ散らかっているし、細かい引っ掛かりポイントがだいぶ多いし(モンゴル軍に喧嘩を売ったとされるラクシャーシーの具体が一切出てこない・ラクシャーシーなしの少女僧でモンゴル軍に対抗できるとは思えない・ヘルカの諦念要素がラビと重ねるためだけに取ってつけられたノイズにしか見えない等)、何より小学生を甘く見てるタイプの小学生向け学習漫画みたいなモンゴル軍の描き方がかなり厳しい(2部の嫌なところがモロに出ている)。

 ただこれらの気になる点はイベ後半になると一転してほとんど見られなくなっており、時系列的にも前半と全く違う話になっている。何より後半だけでもお釣りがくるくらいには後半の怒濤のごとき引き込み力と単体で完結した文脈作りの手腕が凄い。

・このさぁ……f:id:kumota-hikaru:20230630034445j:image
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 自らの戦う理由の定義、個人的な動機と大義の両立、自己犠牲を止めようとしてくれたヒロインと最後に交わす言葉……

 北欧の項でも述べたが、最終回まどかの「世界から顧みられる機会を自ら手放した自己犠牲救済者」の側面を、単なるまどかなぞりではない(神になろうとするのではなくその真逆を行く)方法で鮮やかに描き出している。

・そしてそれだけではなく、f:id:kumota-hikaru:20230630163858j:image
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 出口のない世界の苛烈さとそれゆえに救いにすがってしまうしかない心理の描写、北欧と同様の「ここではないどこかへ行きたい」「こんな出口のないところに居たくない」の情念がシナリオ全体の底力になる構造に加え、
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 そんな情念が生み出すもの(出口のない世界から逃れようとするが故に、理想の投影に陥ってしまう・救いや希望に“すがってしまう”心理)に対するセルフ懐疑もまた見えてくる。北欧もそうだがチベット後半は「希望」を一概に肯定されるべきものとも否定されるべきものとも描いていない。理想の投影や依存の源にもなりうる「希望」の負の面と、「希望」がなければ生きていけない世界、そういう難しさを知った上でなお夢の果てに手を伸ばそうとする人間の意志。これら三つの要素の全てに重点を置いている。

 出口のない世界、ここではないどこかへ行きたいという情念、そこから必然的に生まれる「希望」への渇望に対する懐疑、それらを踏まえた上でなお夢の果てを目指し続ける意志。これらの要素全てが常に意識されている物語。こういうイベストは以前にもあった(2020クリスマスのAngels on the Roadなど。「神」「希望」に対する懐疑、まどマギへの微かなアンチ的視線を含んでいるにも関わらず、「その世界でそれまでに存在しなかった角度からのシステムへの叛逆」という側面においてまどマギ最終回の精神を見事に継いでいる・単なるアルまどなぞりではない形でまどマギ最終回の本質を顕現させようとしている点もよく似ている。というかあれもそのものズバリ「世界の果て」を目指す話だった)。

 今後もそういうところを“こそ”伸ばしていって欲しい。

 

ロックマンエグゼAXESS・BEAST 一押し回まとめ

kumota-hikaru.hatenablog.com

 こちらの記事の続き。

 アニメエグゼ第3作のStreamについては独立にまとめたので、ここでは第2作のAXESSと第4作のBEASTについてまとめていく(第1作の無印はクロスフュージョンの導入前であることやアニログの無料公開もあること、第5作のBEAST+は10分アニメであくまでオマケの感が強いことから、それらについては割愛)。

 アニメエグゼ全体の評に関してもStreamまとめの方で書いたので割愛。

 

ロックマンエグゼAXESS 

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 第1作の無印に続くアニメロックマンエグゼシリーズの第2作。エグゼ3とエグゼ4(特にエグゼ4)をベースにしている。放送開始がエグゼ4の発売前であり、いくつかの要素が原作からフライング登場していたのも特徴。

 なんといってもクロスフュージョン(人間とネットナビの融合による実体化戦闘)の導入はこのシリーズから。無印の時点でアニオリ要素のかなり多いアニメ化ではあったが、ここからが本当の超絶アニオリの始まりである。OPの「二つの未来」もStreamのBe Somewhere に次いで有名な曲であり、「新生感」「新章感」を強く感じさせる。二つの未来はAXESS劇中でアレンジが流れる回数が非常に多いだけでなく、Stream以降でもアレンジが流れ続けBEAST+ではインストも久しぶりに流れるなど、アニメシリーズ全体のメインテーマに近い位置付けになっている。

 クロスフュージョンの導入に伴い全体的な作風が無印から大きく変化しており(BGMの一新、惜しみなく出てくるレアチップ、事件進行のテンポの高速化など)、玩具展開と連動しつつ大量のアニオリ設定が常に押し寄せてくる設定厨アニメ・SFアニメの様相を呈し始めるのもここから。クロスフュージョンほど有名ではないが実体化戦闘の前提条件であるディメンショナルエリアも後のシリーズまでずっと擦られ続ける。

 一方で(少なくともAXESSの時点では)クロスフュージョン一辺倒だったわけではなく、原作エグゼ4のロックマンの新規変身要素であるソウルユニゾンをきちんと12種全て登場させている。ソウルユニゾンロックマンの変身要素でクロスフュージョン熱斗の変身要素なので最終回を除き同時発動することはなく、クロスフュージョンとソウルユニゾンの二本柱と言うべき構成になっている。

 それでいて変身要素を「単に出しているだけ」ではなく、少なくとも前半2クールのソウルユニゾンは発現に至るまでのドラマに総じて気合が入っているのが特徴。人間への殺意が高いダークロイドという敵に日常の積み重ねが生み出す力であるソウルユニゾンで立ち向かう構図の熱さ、使用可能バトルチップに枚数制限のある初期クロスフュージョンの緊張感、ダークブルース関連のシリアスなど、仄暗い雰囲気が漂う中で閉塞を打ち破る変身要素のカッコよさを魅せようとする意志の強さはStream以降と比較しても光るAXESS特有の魅力だと思う。

 以下、印象的だった話数を個別に。

 (※結末までのネタバレを含みます)

 

・1話「クロスフュージョン!」f:id:kumota-hikaru:20230531053242j:image
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 クロスフュージョンの原点にして一つの頂点。これが「アニオリ新章の第1話」であることに大きな意味があると思う。

 「対策必須の未知の技術(=衛星及びディメンショナルコンバーターを用いた電脳存在の実体化)を持つ未知の敵」及び、「それに対抗できる未知の変身(シンクロチップ・クロスフュージョン)の異質感と爽快感」を新章1話から余すことなく示したことの意義。

 実際のところ、ポケモンとトレーナーが融合するとかスタンドとスタンド使いが融合するといった発想自体は別に珍しいものではない。黒歴史で名高いポケモンReBurstもそうだ。だから「無印で1年普通にエグゼをやった後の新章1話からこれを始める」ことに大きな意味があった。

 無印と同様にまずこのシリーズの基本は電脳世界を舞台にしたネットナビ戦闘であるという前提を改めて提示した上で、その前提を覆し主人公サイドを上回る技術で現実世界に出てくるダークロイド(戦うのは因縁深いビーストマンだが大ボスのシェードマンの顔見せも1話で行う)の到来。そんな未知の敵に対抗するための力として周りの制止を振り切り主人公が選択するのがクロスフュージョンという原作に存在しない未知の変身、それだけじゃなく今までの物語で一緒に歩んできた二人の力を合わせているから一人の時よりずっと強くなってるんだという文脈バフ(ロックマン単独で苦戦したビーストマンをCF初戦にも関わらずバスターだけで逆に圧倒してしまう)。

 クロスフュージョン戦闘で流れる二つの未来のインスト、初めてのCFで未知の危機を乗り切って緊張が抜けた顔でその場に倒れる熱斗の「やりきった主人公」感、そして何より敵サイドと味方サイドの双方で作り出した「世界が広がった感」。変身ヒーローの魅力の基本を思い出させてくれる1話と言えるだろう。

 

・4話「ソウルユニゾン!」f:id:kumota-hikaru:20230531053332j:image
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 クロスフュージョンに劣らず気合いの入ったソウルユニゾン初登場回。

 エグゼ2~3の変身要素のスタイルチェンジの喪失とエグゼ4~5の変身要素のソウルユニゾンの獲得、その両方を「クロスフュージョンの影響」で理由付けする筋の通し方。原作エグゼ4にもうっすらと存在したダークチップvsソウルユニゾンの対立構図の明確化。そしてソウル初共鳴キャラにヒロインのロールを選ぶ点にも現れた、「高い殺意と強大な戦闘力で日常を脅かすダークロイドに日常の積み重ねから得た力で立ち向かう」というAXESSのソウルユニゾン特有の文脈。

 オペレーターを持たない純粋な電脳存在のためか総じてシリアスな空気が強く、単騎で社会に大きな混乱を与えることができるし、ダークチップでの自己強化を共通装備としている(このおかげで後のアステロイドより総じて強く見える)ことでロックマンにも対抗できるダークロイド。それと相対する中で自らの無力さを思い知らされた日常サイドのキャラがそれでもロックマンの力になろうとしたことがソウルの共鳴=ソウルユニゾンの発現を促し……のパターンがAXESS前半は多い(9話のガッツソウル、17話のメタルソウルも同様)。このパターン以外にも様々な吊り橋効果を味わうことができる。

 原作エグゼ4のロールソウルの回復能力が「敵の攻撃を吸収して回復する」ドレイン能力にアレンジされており、最初のソウルユニゾンに相応しいインパクトある強さなのも良い。アニメ版ソウルユニゾンは一度発現すればソウルチップ化しオペレーターの任意で使えるようになるため、ロールソウルはこのフラッシュマン戦の後もボウルマン戦やニードルマン戦で活躍するものの、強すぎるためかその後は殆ど出なくなってしまうが……。

 

・7話「電子の花園!」f:id:kumota-hikaru:20230531053421j:image
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 無印でヒートマンに転生していたファイアマンの復活&ファイアソウル発現回。原作エグゼ1でも無印1話でもロックマンの最初の敵だったファイアマンがロールに続く2番目のソウル共鳴相手になるのが熱い。無印のゴスペル編でファイアマンからヒートマンへの転生を何話もかけてじっくり描いたのに比べるとファイアマンの復活はあっさりだが、復活からの即共闘からのソウルユニゾンからのWファイアアームの流れが熱いし、プラントマンの強敵感や事件進行のテンポの良さなどAXESSの良さがよく現れた回だと思う。

 ダークロイドとしてもアステロイドとしてもゾアノロイドとしても序盤で登場して毎回1話退場することで有名なプラントマンだが、水属性チップやダークチップで不利な炎属性(ヒートマンや炎チップ使用のロックマン)相手でも圧倒してくる最初のこのダークロイド個体が一番強く見える。シェードマンからも「趣味の園芸もここまで来れば立派な世界征服だな」と評価されている(?)

 

・17話「強襲ビーストマン!」f:id:kumota-hikaru:20230531053527j:image
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 1話でも戦ったダークロイド個体のビーストマンとの決着回。新ソウルユニゾン発現とクロスフュージョン戦闘が両方ある回は珍しい。

 日常に割り込んできてその脆さを嘲笑う(メタルマンがロックマンを庇うために繰り出した、本来はロックマンとの正々堂々バトルのために用意していたオペレーターとの修行の証の新技が効かない)ダークロイドに、「見せてやる、これが絆の力だ!」を自然な流れで出来るソウルユニゾン。心と引き換えに得た(=ダークチップ)圧倒的な敵の力を、二人で一人の力で超えていく文脈ができるクロスフュージョン。それぞれの良さがよく出ており全体的に熱い流れ。1話と同様クロスフュージョン戦闘決着時に流れる二つの未来のインスト、節目を乗り越え疲れて眠る熱斗のやり切った感が好き。

 

・27話「決戦!ネビュラ基地」&28話「揺れる心」&29話「炎山vsブルース」f:id:kumota-hikaru:20230531053653j:image
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 AXESS中盤の折り返し地点となる最大の佳境、ブルースと炎山の物語の始まり。

 27話はとにかく1話の密度が凄い。黒幕の正体=Dr.リーガルを突き止めてそのアジトに乗り込む展開であるにも関わらず、リーガル(と持ちナビのレーザーマン)及び原作エグゼ4と違いリーガルと決裂したシェードマンの強大な戦闘力や謀略に圧倒され続け、最後はダークチップを使って船の電脳のシェードマンを撃退しなければ全滅という状況に陥る。

 明確な格上のシェードマンを撃退するためにロックマンがダークチップを使うしかないという展開、炎山がダークチップを使いブルースを失ってしまう展開。いずれも原作エグゼ4に存在したものだが、その二つを直列で繋ぎつつ(熱斗ロックマンにダークチップを使おうとしたのを阻んで炎山がブルースに使う)、ダークチップの影響で自我を失う直前にブルースがロックマンにソウルを託していく展開は要素の繋げ方が上手いとしか言いようがない。

 OPに映っているもののこれまで引っ張り続けてきたブルースソウルが発現するタイミングとしてこれ以上のものはないし、闇堕ち展開をやりつつ炎山もブルースも格が下がらない。この回はそれまでDr.リーガルやシェードマンの謀略に翻弄される展開が続いていたのが、最後の最後で味方にも敵にも予測不可能な「感情の力」の具現化で一糸報いる。ソウルユニゾンの使い方としてこれ以上のものはない。

 そしてブルースがいなくなってもロックマンがブルースソウルを使い続けていくこと(ソニックブームを撃てるバリアブルソードが標準装備というアレンジもある)、ブルースを失っても炎山から戦う気力が失われていないことが28話で示され、29話では熱斗と炎山のいかにも男の子の友情っぽい殴り合いと本音のぶつけ合いの後、いよいよダークロイド化しDr.リーガルの尖兵になったブルース相手でも炎山がネットナビ無しで渡り合っていけてしまう展開。

 ここからの炎山はクロスフュージョン戦闘はおろかネットナビ戦闘すらできなくなったのにブルースがいた頃以上に活躍する凄まじい勇姿を見せる。クロスフュージョンという「二人で一人の新たな力」を導入したからこそ、二人で一人が全てじゃないことを証明するための必然の展開と考えれば極めて筋が通っている。

 熱斗との信頼関係の描写にも気合が入っており(CF戦闘時のチップ枚数制限を解決するため新たに開発されたバトルチップゲートで炎山がCFロックマンのオペレーターのようなポジションになるなど)、全体を通して基本的にテーマ性は薄くエンタメに振っているエグゼ全体を通しても、AXESS後半の炎山・ダークブルース関連は異色の存在感を放つ出来になっている。

 

・46話「ネット警察大攻防戦!」f:id:kumota-hikaru:20230531053937j:image
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 原作エグゼを彷彿とさせる終盤のボスラッシュ回。これまでにデリートしてきたダークロイドが復活し大挙して押し寄せ、これまでに会得したソウルユニゾンをソウルチップで次々と切り替えて戦う。

 基本的にダークロイド軍団は尺の都合でワンパン再デリートされるのだが、色んなダークロイドや色んなソウルユニゾンの戦闘が久しぶりにテンポ良く見られるのはやはり楽しい。エグゼ4のソウルユニゾンをちゃんと出してきた意味も感じられる。リーガルの衛星の座標を特定するミッション遂行中の炎山を熱斗とライカが守るための戦いという構図も良い。

 

・49話「さらばブルース」f:id:kumota-hikaru:20230531054046j:image
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 ダークブルース決着回。

 敵側の最高戦力と化したブルースからダークオーラを取り払うために味方側のキャラが総力を挙げる展開、新たに開発されたワクチンチップを駆使した熱斗(CFロックマン)の死闘と目論見通りにいかない絶望感、相棒を正気に戻すべく精神世界に入るために使われるクロスフュージョン、二つの未来のインストを流しながらのブルースの精神世界での炎山の「どんな姿になろうとも、どんなに心が穢れても……ブルース、お前は俺のナビだ」。

 1話・17話と似た「重要な節目を乗り切り、満足した顔で疲れて倒れる」熱斗。ブルースが戻ってきたことで、微笑を浮かべながら目を閉じて壁に背中を預ける炎山。暗闇に朝日が昇る演出と、静かな「やりきった感」がとても良くマッチしている。

 

・51話「光とどく場所f:id:kumota-hikaru:20230531054205j:image
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 ED「光とどく場所」の曲名をそのままサブタイに持ってくる、身体への負担が大きいからと止められていたクロスフュージョンとソウルユニゾンの重ねがけをついに使う、主人公vsラスボスがCFvsCFで5枚のソウルチップvs5枚のダークシンクロチップという構図、そこへさらに原作変身要素のフルシンクロも重なる、二つの未来が実質メインテーマなだけあって最終回でOP流すやつをシリーズで唯一行う、ラスボスの巨大CFレーザーマンを1話のビーストマン戦と同様にチャージショットで倒す。王道まっしぐらの最終回。

 クロスフュージョンとソウルユニゾンの二本柱をしっかりやってきたからこその到達点が見てて心地いい。サーチマンがロックマンに次ぐポジションで活躍しているのもライカがまだクロスフュージョンを会得していないからこそという感じがする。あとレーザーマンとかいう公募キャラがまさかのアニメラスボス務めてる(原作エグゼ4でも大ボスポジションではあるが)こと自体が面白い。

 前話でCFロックマンを圧倒してたのに冒頭でCFレーザーマンのかませにされグロ死してしまった(かに思われた)シェードマンの名誉挽回、AXESSでは未回収で終わったゆりこやデューオ関連の伏線回収はStreamを待たなければならないが、AXESSだけで見てもやはり全体を通して「未知の変身要素のカッコよさと文脈」を魅せることに余念のないアニメだったと思う。あとやはり王道にも鬱寄りにもマッチする二つの未来の汎用性が高すぎる。

 

 

ロックマンエグゼBEAST

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 無印・AXESS・Streamに続くアニメロックマンエグゼシリーズの第4作。エグゼ6をベースにしているが、2クールしかないことやBEAST+の存在もあって未登場のエグゼ6キャラも多く、その代わり過去作要素の再登場に気合が入っているためStreamに続いてシリーズの総決算感が強い。

 全体としてはStreamよりAXESSに近い雰囲気で、劇中の情景も全体の雰囲気も荒涼としたシリアス寄りの作風。というかStreamの微妙だった点(アステロイドがダークロイドの使い回し感強すぎる&戦闘力が低い、クロスフュージョンに寄せすぎてネットナビの存在感が薄い、いらない回が多い、戦闘の作画が死んでる)を全体的に改善している。

 ビヨンダードと呼ばれる荒れ果てた並行世界からやってきた新たな敵のゾアノロイド、その背景にあった獣化因子の設定はStreamのアステロイド関連に劣らず練られている。全体として原作変身要素の獣化に重点を置きつつ後半のビヨンダード編ではCFなしでネットナビそのものが実体化するなど、熱斗よりロックマンの活躍が中心に描かれる中で、ここぞという時にだけ出てくるクロスフュージョンもむしろ当初の異質感・爽快感を取り戻しているように感じる。

 以下、印象的だった話数を個別に。

 

・2話「ゾアノロイド」f:id:kumota-hikaru:20230531054620j:image
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 アステロイドに続くアニオリの○○ロイド、電脳獣の配下のゾアノロイドがいかなる存在かを提示してくる回。

 最初のゾアノプラントマンとゾアノスパークマンはまたしてもダークロイドの使い回しだが、異世界(ビヨンダード)出身の並行同位体であるためこちらの世界の詳細を知らないこと、同じゾアノロイドでもグレイガ陣営とファルザー陣営で互いに対立していること(エグゼ6要素)、そして何より原作エグゼ6ではロックマンだけの能力だった獣化を共通装備で使ってくることで「異質感」をふんだんに出してくる。

 全てのゾアノロイドが獣化能力を持つとは言ってもパッと見でよくわからない程度の小さなアレンジが大半だが、これにより未知の獣化デザインの楽しみや敵の不気味さが確保されている。

 

・6話「ネットナビ改造計画」f:id:kumota-hikaru:20230531054859j:image
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 ゾアノファラオマンの恐ろしさが印象的な回。

 ゾアノロイドはアステロイドとの被りをある程度避けるためか、パンク・フレイムマン・ダークマンといったこれまでのシリーズで出しそびれたボスをゾアノロイド初出で出してくるのに加え、過去作由来でも特に無印のボスから意外な人選をしてくる傾向がある。その筆頭が無印のエグゼ1編の大ボスで、ロックマンを一度デリートさえしたファラオマンのゾアノ化だろう。

 ロックマンたちの強さがインフレしたのもあってか、無印当時のファラオマンほどの強さは感じさせないものの、民間のナビを不可視のピラミッド型空中要塞に拉致し謎の棺桶でグレイガ軍の兵士に改造する(ファルザー側ゾアノロイドのゾアノスパークマンさえナビマークを書き換えてグレイガ側に改造してしまう)能力の恐ろしさ、実体化戦闘でCFロックマンに敗北してもコピーロイドを乗り捨てて電脳空間に逃げ帰る狡猾さなど、無印のファラオマンとは異なる方向性で大物感を出すことに成功している。

 そんなゾアノロイドに立ち向かうロックマンの新たな変身能力である(シンクロナイザーのトリル由来の)獣化もまた暴走を伴う力であり、総じてスタイリッシュだが荒涼としたBEASTの雰囲気を感じさせる。

 

・9話「氷の心」f:id:kumota-hikaru:20230531054933j:image
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 BEASTで最も有名で人気が高いと思われる回。

 Stream19話の「幸せを呼ぶ爆発」がアステロイドと友情を育んでしまう話だったのと同じように、今回はゾアノロイドと友情を育んでしまう話である。ここにきて無印以来のアイスマンメイン回で、無印ではゴスペルの最高幹部ということ以外特に個性のなかったフリーズマンが氷系ナビ繋がりで抜擢された結果、忍殺のヤモトとシルバーカラスのような儚い関係性を構築してしまうアイスマンとゾアノフリーズマン。相変わらずどこから湧いてきた発想なのか分からな過ぎて凄いが、それでちゃんと感動回にできてしまうのも凄い。

 ファルザー側のゾアノフリーズマンを追いかけてデリートしようとするグレイガ側のゾアノストーンマンという筋立てもゾアノロイドの設定が活かされてるし、ゾアノフリーズマンがアイスマンに遺した通信機が後の展開で主人公サイドに活用されるのも良い。

 

・16話「料理は愛情」f:id:kumota-hikaru:20230531055005j:image
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 個人的にBEAST後半のビヨンダード編で最も好きな回。

 エグゼ6グレイガ版の味方キャラであるパクチー&スラッシュマンをビヨンダードの住人として登場させる……までは分かるが。同じエグゼ6キャラではあるもののパクチーとは何の関係もない熱斗のクラスメイトの悪ガキキャラだったコジローを「パクチーお姉ちゃんの隣で戦う熱斗に嫉妬するショタ」として出す、相変わらずの超采配。コックとして勤めていた豪華客船と乗客をゾアノロイドの襲撃で失いコジローの村に流れ着いた(ことから激しい復讐心を抱える)パクチーのやたらシリアスな過去。ホエールマンとかいう無印の謎のアニオリかませナビがなんかゾアノ化してシリアス面してる面白さ。

 そしてBEAST1話でクロスフュージョンに追加されたジェットバーニアによる飛行能力を活かし、時間制限付きだがネットナビが実体化できるビヨンダードであえてクロスフュージョンを選択し、ビヨンダードでのクロスフュージョン特有の身体へのダメージに耐えながら海上のコジローを助けに行く熱斗。その後のパクチー&スラッシュマンの仇討ちも含め、無茶苦茶やりつつちゃんと決めるところは決めてくれるところが良い。

 

・25話「光を超えて」f:id:kumota-hikaru:20230531055116j:image
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 AXESS最終回の「光とどく場所」からの「光を超えて」のサブタイが感慨深い最終回。

 ディメンショナル○○・シンクロナイザー等の伏線回収や既存SF要素を総動員して黒幕(ビヨンダードのDr.ワイリー)が世界に撒いた獣化因子を消す方法を示しつつ、作画がイマイチだった前作ではほとんど見られなかったStreamキャラのちゃんと動く戦闘シーンも見られ、それでも歯が立たないラスボスを最後の最後で逆に圧倒する新規変身要素。アニメエグゼの全てである。

 総力戦感・集大成感もあるが、何よりも最後のクロスフュージョンである。BEAST後半のビヨンダード編ではほとんど使われなかった(使う必要がなかったしデメリットも設定されていた)クロスフュージョンを最後の最後で、状況の解決もあるがそれ以上に、取り込んだシンクロナイザーの暴走に苦しむロックマンを助けるための賭けとして、周りの制止を振り切って選択する熱斗

 AXESS最終盤の炎山もStream最終回のバレルもそうだったが、クロスフュージョンは単に戦闘手段というだけでなく「結んだ絆の証」「わかり合いの手段」でもあるという文脈をここにきて主人公が体現する。その結果、原作ゲームだけでなくアニメでもこれまで見せたことのなかった白い獣化スタイルとなる。

 アニメ・ゲーム通してのエグゼシリーズ最終フォームであり、正真正銘ここでしか見られない獣化クロスフュージョン。ビヨンダードのDr.ワイリーが乗り移った超電脳獣グレイザーもアニオリ(しばしば原作への逆輸入希望の声を見かける)であるため、主人公vsラスボスがアニオリ最終合体vsアニオリ最終合体という構図になっている。

 からの「無言で圧倒」「一対一での真っ向からの撃破」。OPの勝利のうたのインストもここでしか流れない。「どうやって倒すんだ感漂うラスボスであっても新規変身が出たら逆に圧倒する」アニメエグゼの黄金パターン。まさに奇跡も魔法もあるんだよ精神と言うべきものではないだろうか。

 AXESSのソウルユニゾン×クロスフュージョンと似た展開でありつつもさらに上を行った獣化クロスフュージョン。最後の最後までクロスフュージョンというアニオリの象徴を解決の鍵とし続ける意志。「光を超えて」のサブタイに恥じない出来だったと思う。

雑記(遊戯王):自分自身のための戦い

 物語の主人公。

 それは物語に登場する様々なキャラと関係を持って解決に導いていくにあたり、しばしば「救済者」的なムーブが求められる(場合がある)ポジションだ。

 酷いことをされても怒りに囚われない、屈しない、仲間を助けるために奔走する、罪を抱えた敵を赦す。

 それらは「自分自身のために戦う」「己の人生の物語を生きる」こととは一見して両立しづらいように見える。

 ……本当にそうだろうか?

 むしろ自らの戦いの根本の動機を自分自身のためと定義しているからこそ取れる視座があるのではないか、個人的な経験の蓄積から得たものこそが共感や牽引力の源になるのではないか?

 遊戯王ZEXAL(1期)の九十九遊馬を例に、彼の「人を助ける」主人公性を裏付ける「原動力」と「資格」が何だったか、助けようとした相手からの拒絶を何によって乗り越えてきたか、熱の入った台詞回しではっきりと定義していたタッグ回(シャークとのタッグ回・カイトとのタッグ回の両方)を取り上げて考えてみる。

 

 引用させていただく。

https://hitotonoya.hatenablog.com/entry/2021/01/23/170240

一方で10話~12話では遊馬と鉄男の友情も掘り下げられています。
遊馬はこの10話で「ナンバーズを使わないで勝つ」と宣言しておきながら、「シャークを救うため」という上っ面の言い訳をしながら、負けることを恐れてナンバーズを使ってしまったうえ敗北します。

この遊馬の嘘に、幼馴染の鉄男は失望させられてしまうし、遊馬は10話の時点でシャークを救うこともできません。

鉄男からの信頼を10話で裏切ってしまった遊馬が、11話12話で本音を曝け出したデュエルをします。その「遊馬の、誰のためでもない、自分のためのデュエル」が真にシャークを救い、デュエルを見ていた鉄男からの信頼を取り戻す、という流れになっています。

http://lipcre.sakura.ne.jp/11/yugiz3.htm

「オレ、行かなきゃ…!」

「ま、待って遊馬!もうやめようよ、シャークに関わるの…どうしてそこまでシャークのために…」

「オレは…シャークのために行くんじゃない、オレ自身のために行くんだ…
 オレは自分に嘘をついた…シャークを助けるためだとか言って、本当は勝ちたかった…!
 ただシャークに勝ちたかったからナンバーズを使ったんだ!
 オレは…オレは嫌なんだよ…!このまま終わっちまうの!!」

 

「お前の居場所はこんなとこじゃねえッ!!」

「なっ…押し付けがましいんだよ!なんでそこまで…」

「仲間だからに決まってんだろ!」

「く…っ…!」

 

「あれが原因で、お前はデュエルの表舞台から永久追放されたんだよなぁ?ハハハハハ!」

「…オレは…負けるのが…恐かった…」

「ぶはははは!優勝候補が負けるのが恐かっただとよぉ!ブザマだな~?ええおい!」

「…」

「まったく情けねえ野郎だぜ!ハハハハハ!ハーッハッハッハッハッ!」

「笑うなァァァァッ!!」

「「「!?」」」

「何がおかしいんだ…!負けるのが恐くて、何がおかしいんだ!!
 オレだって恐かった…!シャークとデュエルした時、負けるって思った瞬間
 恐くなっちまって…だからナンバーズを使っちまった…!
 シャークを助けるためだとか言いながら!負けるのが恐かった!オレは嘘をついていた!
 でもだからこそ思うんだ…もう絶対にデュエルだけには嘘をつきたくないって…!
 シャークだってきっと同じだ!
 だからシャークのデュエルは!本物なんだァッ!!」

「…遊馬…」

「相手がどんな汚い手を使おうが!
 オレ達は正々堂々戦って勝つ!!
 それが…今のオレ達のデュエルなんだ!」

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 3年に渡る番組の最初期のエピソードだが、間違いなくZEXAL全体通してのベストバウトの一角に数えて良いだろう。

 遊馬が折れない主人公でも万能の救済者でもなく折れて立ち上がる主人公であること、だからこそ本気の共感を他人に向けることができるキャラクターであることの証明。

 「俺があいつを助けに行くのはあいつのためじゃなく俺自身の納得のためだ」と口では言いつつ、実際の行動は明らかに「あいつのため」も入っている献身的なもの。にも関わらず己の戦いの動機を「俺自身のため」と定義する姿勢そのものが、恩着せがましさを避けつつ己のコアを見失わない効果をもたらし、拒絶と敗北を突きつけられた上でもう一度向かっていくための原動力になっている。

 それだけではなく、「このデュエルにはシャークとオレの未来がかかってる」の台詞に現れているように、「自分自身のプライドを取り戻すための戦い」を選択したからこそ、助けたい相手(シャーク)にとって単純な救済者ではなく「同じ目線で一緒に戦ってくれる人」になることが結果的に可能になっている。

 負ける恐怖に屈して自分自身の課したルールを破ってしまい、己の弱さをこっぴどく突きつけられる展開。しかしそれがあったからこそ同じように負ける恐怖に屈してしまったシャークの気持ちを理解することができた、熱のこもった共感を口にすることができたという流れ。

 己の弱さを真正面から認めつつ、弱さと戦う意志をこそ原動力にする。それこそが単純な救済者ではない「同じ目線で一緒に戦ってくれる人」になるために必要な過程だった。「己の経験に基づいて弱さを理解・肯定」した上で「弱さに安住したくない意志をこそ汲み取ろうとする」遊馬の姿勢こそが真にシャークに戦う勇気を与えてくれたという筋。

 後の展開でもテーマになる、「カオス(光と闇の両方)を内包した人間の心を肯定する」こととは具体的に何か、の一例を示す展開としても極めて明快なものと言えるだろう。

 

http://morgenstern11.blog.fc2.com/blog-entry-60.html

Ⅳは哄笑を上げますが、カイトくんは無傷のまま。
遊馬くんがとっさに罠カード「攻撃の無敵化」を
発動していたのです。
予想だにしていなかったのか、驚愕するⅣとⅢ。
このカードはバトルと効果による破壊を
無効に出来ました。
Ⅳは忌々しげにエンド宣言します。

「アストラルの指示か?」
遊馬くんに助けられたのが不服なカイトくんが
問いました。
「違う、オレの意志だ!」
遊馬くんは即答します。
お前が敵だって言うなら敵でも構わない。
けどオレはハルトと約束したんだ。
あいつはずっとお前に会いたがっていた。
「だから、必ずお前をハルトの元に連れて行く!」
遊馬くんの真っ直ぐな目をカイトくんは
黙したまま受け止めます。

 

https://slowly47837.hatenadiary.org/entry/20120213/p1

前回同様、自分のLPを犠牲にしてカイトを守る遊馬。

その頃、トロンはハルトの記憶までも奪おうとしていた。

 

IIIのナンバーズ、マシュマックの効果と攻撃で大ダメージの遊馬とカイト。

焦るカイトを気遣う遊馬だが、「お前に俺の苦しみ、憎しみの何が分かる!!」と、

突っぱねられる。そんなカイトに遊馬は・・・・。

 

「・・・ああ、分からねぇ。分からねぇさ!

 お前やハルトの憎しみも悲しみも。

 だけど、俺はお前とデュエルした。

 デュエルを通じて、お前を知っちまったんだ!

 デュエルは新しい仲間を、絆を作ってくれる。

 そして、デュエルってのは!!

 新しい自分に、かっとビングさせてくれる!

 決して恨みや憎しみをぶつける道具じゃねぇ!

 みせてやる!俺のかっとビングを!!」

 

力尽き、立つ事も出来ないカイトに、遊馬が叫ぶ。

「立てよ、立つんだよカイト!」

「ボロボロでもいいよ・・・。

 最後まで諦めるなよ。

 お前が諦めてどうすんだよ!!

 ・・・お前がハルトを守らなくて・・・誰がハルトを守るんだよぉぉぉぉ!!」

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 40話~41話からエピソードとしては連続している、42話~43話にかけてのカイトとのタッグデュエル(カイトの超銀河眼覚醒回)。

 シャークとのタッグでは失敗を一度経てシャークと同じ弱さを共有して初めてシャークの気持ちを理解し本気の共感を口にすることができた。逆に言えば最初から簡単にシャークのことが理解できたわけではない。「お前の気持ちが俺にはわかる」をやるためのハードルは低く見られていない。それはこのカイトとのタッグも同様だ。

 なんだかんだ最初から面倒見の良かった(自らの意志で遊馬の側についたしアーマードエクシーズを託してくれた)シャークに比べ、初期カイトは目的達成が必然的に遊馬との敵対を含むのもあって圧倒的に当たりが強く、カイトとハルトの抱えた孤独や二人だけの事情へ安易に「わかる」と理解を示すことは遊馬にはできない。

 だがそんな自分の限界を真正面から認め、助けたい相手との心の距離を尊重した上でなお寄り添おうとする姿勢と行動を示し続けたこと、それこそが消えない断絶を乗り越えた信頼を最終的に生じさせる効果をもたらしている。

 「お前と敵対したくない」ではなく「敵でも構わない」「けどオレはハルトと約束したんだ」、「お前のことがわかる」ではなく「わからねぇさ」「でもお前のことを知っちまったんだ」。そして「自分がハルトを守る」ではなく「お前がハルトを守らなくて誰がハルトを守るんだよおお!」の一見根性論に見える台詞こそがカイト自身の膝をつけない理由に火をつけ、立ち上がる勇気と他人を頼る勇気をもたらす流れ。

 あくまでも自分自身の意志を強調しながら助ける行動を惜しみなく見せつつ、相手の課題が最終的には相手の意志の発露によってしか解決できないことを見据えている。アプローチの仕方は違えど、単純な救済者ではなく「同じ目線で一緒に戦ってくれる人」になろうとしたのはシャーク回の時と同じ。

 シャークには「押し付けがましいんだよ!」カイトには「お前に俺たちの何がわかる!」と、「助ける」主人公をやるにあたり存在して当然の拒絶や断絶を真っ向から突きつけさせた上で、何がそれを乗り越えて手を繋ぐのを可能にする資格となるか、“自然と”優しさや熱の籠った台詞がどうしたら湧いてくるかをこそ描き出す。それがこれらのタッグ回の本質だと思う。

 

 少なくともZEXAL1期において、九十九遊馬という救済者主人公は、救済者主人公だからこそ「共感の源となりうる自分自身の意志と経験」や「相手との間に存在して当然の心の距離」を重視している。

 これは敵キャラに手を差し伸べていく過程も同じだ。黒幕の一人のトロンとの決戦にあたっては「トロンの息子たちと同じように親に置き去りにされた孤独を知る子ども」の立場からの叫びを口にする。最後に元凶のフェイカーを助ける際にも「あんたのことは憎いさ。けどあんたは一生懸命ハルトを生かそうとした。きっと父ちゃんなら仕方がないって笑う」と、憎いという個人の感情を否定せず前置きした上で、同じように個人の感情に基づいて赦したいという意志を示している。

 

 その一方でZEXAL2期に入ると、守るべきものが拡大していくにつれ遊馬の個人的な動機ベースでは回収しきれないものも増えていき、託された大義と個人的な動機のどちらを取るかが課題として現れる場面も出てきた。最終盤のナッシュ戦の幕引きなどは特にそれを強く感じさせる。

 この論点は2作品後の遊戯王VRAINSにも受け継がれた。

 九十九遊馬と違い陰キャ成分が強く、(ダーク)ヒーローでありつつも救済者主人公の色は薄く、「あくまでも個人的な戦いを選択する意志」「一個人だからこその視座を重視する傾向」をより強く出してきた主人公の藤木遊作。

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 そんな遊作に突きつけられる度重なる人質展開、個人の情とヒーローの役割が衝突する実例の提起。特にそれが凝縮され明確に言語化されているのが、93話「交わした約束」。

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 最初は自分自身に決着をつけるための戦いだったとしても、歩み続けていく内に気付けば自分の道に付いてきてくれた人がいて、結果的に色んな人々の希望を背負った存在になっている。

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 遊作がヒーローになっていった道のりをBGM「自分だけの正義」と共に言語化していくと同時に、「皆の希望として、私情ではなく大義を取ってほしい」という「個人的な約束」が、現実に草薙との対決を強要されて立ちすくむ遊作の背中を最終的に押す展開。

 ではこの後の遊作は個人的な戦いを捨てて皆のヒーローに徹することを決めたのかというと、

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 皆の希望となったことを自覚した上で、それでも結局やはり自らの戦いを「自分自身のため」と定義する。自分のコアを保つことを大事にし続けるのである(ZEXAL2期終盤の遊馬の決断も結局同じ話ではある)。

 VRAINS3年目が2年目までの展開で消化しきれなかったキャラクターの内面の課題(特にソウルバーナー、リボルバー、Aiがそれぞれ抱えた喪失による傷)の決着を軸とする内容なのもあり、VRAINS最終盤はそれまでの遊戯王で中々見られなかったタイプの内向性を帯びた作風となる。

 仲間を伴わず一人だけでAiと最後の決着をつけに赴く遊作、そんな遊作を何も言わずに送り出す仲間たち。あくまでも「個人」にフォーカスし続けたからこそ、遊作が他人との断絶を常に抱えた陰キャ主人公だからこそ、そういった間合いの描写が可能になっている。

 最後のこの結論も、f:id:kumota-hikaru:20230525002232j:image
 「個人」にフォーカスし続ける意志によってこそ到達できたものだと思う。

ロックマンエグゼStream(劇場版含) 一押し回まとめ

 2023年4月14日、ロックマンエグゼアドバンスドコレクション発売。

 それに伴い、Youtubeで5月末までアニメのロックマンエグゼシリーズ全話が無料配信。

 ゲームのエグゼシリーズの根強い人気と圧倒的な知名度&プレイヤー数に比べると、アニメシリーズの方は完全なアニオリ・独自路線だったこともありマイナーの感が否めない。

 しかしアドコレ発売に伴ってロックマンエグゼまとめ@Wikiにアニメ関連の記述が増えつつあり、以下の4gamer記事のように大胆ながらも練られた原作アレンジの上手さに着目した再評価も現れるなど、アニメについても少しずつ語られる機会が増えつつある。

 アニメエグゼの象徴たるクロスフュージョン(アニオリの融合変身ヒーロー要素)を、エグゼの後継シリーズである流星のロックマンのプロトタイプとして見ることが可能なのも影響していそうだ。

 全話無料公開は間もなく終わってしまうが、またいずれ何らかの形でアニメにスポットが当たる機会もあるかもしれないし、備忘録も兼ねて第2作「AXESS」から第4作「BEAST」にかけての一押し回をまとめていきたい(※第1作の無印はクロスフュージョンが出ないことやアニログでも無料公開が続いていること、第5作の「BEAST+」は10分アニメであくまでオマケの感が強いことから今回は割愛)。

 その中でもアニメシリーズで体感最も人気が高いっぽい(はっきりした指標はないが)、第3作の「Stream」に関してこの記事で独立に取り上げようと思う。Streamだけ先に取り上げるのはおそらく最もメジャーっぽい(劇場版があるのもStreamだけ)ことに加え、作風の傾向も第2作AXESS・第4作BEASTと少し違ったものに感じるため。

 

ロックマンエグゼStreamf:id:kumota-hikaru:20230518174841j:imagef:id:kumota-hikaru:20230518174936j:imagef:id:kumota-hikaru:20230518174956j:image
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 「無印」「AXESS」に続くアニメエグゼシリーズの第3作で、ゲーム版のロックマンエグゼ4・5(特にエグゼ5)をベースにしている。

 まずOPの「Be Somewhere」がシリーズぶっちぎりで有名。作詞作曲がポルノグラフィティの人で歌詞も曲調もインパクトが強く、エグゼの曲と言えばゲーム版含めてこれという人も少なくないっぽい。サイバー感と宇宙感が作品内容にもマッチしているし、OPで流れていない2番以降も「不安」と「希望」を繊細に言語化した印象的な歌詞だ。

youtu.be

 Streamに話を戻すと、全体的な傾向としてはSF色が強い。原作ゲームもSFだが方向性が異なっており、「宇宙からやってきた電脳存在による人類への審判」(エグゼ4ラスボスのデューオ)、「時空移動」(エグゼ5のパストビジョン)といった、確かに原作にも存在はしていたがそこまで大きな扱いではなかった要素を大量のアニオリ設定でシナリオの根幹にまで魔改造している。

 その一方で1話完結色も強い。「デューオの試練をクリアしなければ地球抹殺が実行される」という縦軸は最序盤で提示されるし後半はシリアスが増えるが、基本的には怪人(アステロイドとその持ち主)が愉快な事件を起こして主人公や味方キャラがクロスフュージョンでしばく1話完結のエピソードが多く、全体としてはAXESSBEASTよりギャグに寄せた作風になっている。

 詳しくは後術するが前作AXESSで登場したクロスフュージョン(人間とネットナビの融合)を全アニメシリーズで最も前面に出しているのも特徴である。その弊害として原作変身要素のソウルユニゾンはほとんど出なくなってしまうが、代わりにエグゼ5の味方キャラにアニオリのクロスフュージョンが用意されている。

 「名人さん、ディメンショナルエリアを!」「さんはいらない! ディメンショナルエリア展開!」「シンクロチップ、スロットイン! クロスフュージョン!」のテンプレが確立したのもこの作品。アステロイドの設定と併せ、要するにテンプレ変身ヒーロー要素がシリーズで最も強い。「宇宙」「彗星」がモチーフなのも含めて後の流星のロックマンを思わせる。

 以下、印象的だった話数を個別に。

 (※結末までのネタバレを含みます)

 

 

・2話「地球抹殺」f:id:kumota-hikaru:20230519123756j:image
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 1話と併せて縦軸提示回。

 衝撃的なサブタイが物語る通り最初からクライマックス。ディメンショナルエリア無しで実体化可能な巨大ウィルスで地球抹殺を実行に移すデューオ、デューオの使者に過ぎない存在でありながら原作最強ライバルのフォルテを圧倒してしまうスラー(※アニオリ)と、宇宙からの襲来者が技術も戦闘力も明確に別格の存在として描かれているために緊張感がある。

 正直デューオは所謂「や人愚滅」系な気がしなくもないが、そんなデューオに人間への興味を抱かせたのが前作で登場した「原作に存在しない変身要素」たるクロスフュージョンという展開は中々熱い。結局この話の時点で最終回の幕引きに繋がる伏線は撒かれているし。

 

・3話「アステロイドの脅威」f:id:kumota-hikaru:20230518211813j:imagef:id:kumota-hikaru:20230518211842j:image

 デューオの試練=アステロイド(※過去作でデリートされた敵ボスの残留データから宇宙のテクノロジーで強化再構築された存在)が悪の芽を持つ一般人たちにスラーの手でばら撒かれ、その起こした事件を主人公たちがクロスフュージョンで迎え撃つ、というStreamの基本フォーマット提示回。

 AXESS1話でダークロイド第1号として初登場したビーストマンがアステロイドとしても第1号で立ちはだかり、AXESSではできなかった原作エグゼ3の動物園の動物を暴走させる事件をここにきて再現。大半のアステロイドは登場回で退場するが犬飼とビーストマンは逃げ延びて後にエグゼ3モチーフ悪の組織のネオWWWに合流と、変則的な原作再現を可能にしている。

 人間の悪性との戦いをやる正統派ヒーロー・魔法少女フォーマットを長期的にやっていけるようにしつつ、アニメが原作の発売ペースに追い付いたことで新規ボスのストックが尽きてしまった問題を過去ボスの使い回しで緩和と、完全なアニオリでありつつアステロイドはかなり練られた設定であることが見て取れる。まぁコンセプト上は人間の悪性との戦いと言いつつ実際の話の内容はチンピラとの戦いやヒャッハーとの戦いが大半だが……。

 

・15話「氷の発明で…コフ!?」f:id:kumota-hikaru:20230518212009j:imagef:id:kumota-hikaru:20230518212025j:image

 味方キャラ(炎山、ラウル)のおふざけ要素とゲスト敵キャラ(イワン・コオリスキーとアステロイドのコールドマン)の哀愁が印象的な回。

 原作エグゼ4のコオリスキーはロシア人モチーフだから語尾にコフやチョフを付けるというふざけたキャラ付けに加え、暑着してるのに暑いのが嫌だからという理由で世界中の気象管理システムにハッキングする原作屈指のサイコパス一般人だったのだが、アニメのコオリスキーは(語尾にコフやチョフは同じだけど)原作と逆に、「自分の研究が日の目を見ることなく終わるのが嫌だった」「金が欲しいわけじゃなかった」と、スラーにアステロイドを与えられて暴走した一般人の中では同情の余地がある動機のキャラになっている。

 出てきたのが後の流星のロックマンなら彼にも何らかの救済やフォローがありそうだが(※流星のロックマン1も心に孤独を抱えた一般人に憑りついて電波変換ボスになるFM星人との戦い)、コオリスキーはどことなく同情的な手つきで描かれつつも結局はバッサリ切り捨てられる。そこは作風の違いというものだろう。

 

・19話「幸せを呼ぶ爆発」
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 Streamの中ではぶっちぎり有名で人気が高いと思われる回。アニヲタWikiにこのエピソード単独の項があったりする。アステロイドのナパームマンと花火職人の燃次の出会いを通して、人間の善性が持つ可能性を(珍しく)ちゃんと真面目に証明してしまう。

 メタ的にはアステロイドという設定自体にナパームマンのために用意された側面があると思われる。原作エグゼ5の仲間キャラのうち新規キャラは3分の1だけで他は過去作からの再登場、特にエグゼ2出身が多い。すなわちアニメ的にはエグゼ1・2ベースの無印からの再登場が多くなるということだが、ナパームマンは無印でデリートしてしまっている。その再登場と味方化、原作でも謎だった燃次とのコンビ化のために同じ姿の別個体を出せるアステロイドの設定が活かされたというわけだ(まぁ似たようなポジのシャドーマンはDr.ワイリーがヌルッと復活させたが……)。

 要は販促の都合なのだが、販促の都合から生まれた展開をたった1話でここまで感動的に仕上げて作中屈指の人気回にまでしたのは素直に凄いと思う。

 

・22話「デカオ、カレーなる転身」f:id:kumota-hikaru:20230518212256j:image
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 エグゼ1の初期WWWメンバーがアニメでは無印の後半以降(マハ・ジャラマがインド人モチーフというだけの理由から)カレー屋になって準レギュラー化・味方化する話は有名だが、そこにレギュラーガキ大将キャラのデカオ&ガッツマンやエグゼ5仲間キャラのディンゴ&トマホークマンも合流し、デカオに至っては義務教育や労働法ガン無視でプロのカレー屋として成功してしまう。原作を知ってるとどこから湧いた発想なのか分からなすぎて凄い。

 かつて熱斗に抱いていたライバル意識はどこへやらカレー屋として安定してしまったデカオや旧WWWメンバーに、デカオの弟やネオWWWの砂山が「あいつは腑抜けやがった」の視線を向け、それに対しデカオや旧WWWメンバーは実は最初からネオWWWを追う独自の目標を持っていたしそのために主体的に行動できるという回答を示す展開もあるので、ぶっ飛んだギャグをやりつつ話の筋としてもちゃんとしておりストレスがない。

 デカオや旧WWWのカレー屋はこれ以後主人公たちのたまり場・帰るべき日常の象徴となるだけでなく、Dr.ワイリーやダークミヤビといった裏の人間と接点持つ場所としても機能するのがなんか良い。

 

・25話「戦慄のバースディプレゼント」f:id:kumota-hikaru:20230518212553j:imagef:id:kumota-hikaru:20230518212611j:image

 頭のおかしいギャグからシリアス展開へシームレスに移行するStreamの作風を象徴する回。前半で妙な仲良し感や主人公との馴れ合い感を見せたと思いきや後半で一転して総力戦を挑み追い詰めてくるネオWWWの丁度良い悪の組織感と、悪の女幹部じみたビジュアルと立ち位置だったのが味方側のお助けキャラになると凄まじく頼りになるゆりこの魅力が光る。

 前作AXESSでは終盤まで悪役だったのが行き場を失い自分の道を決めかねていたゆりこ(※一応原作にもいるはいるがほぼアニオリ同然のキャラ)が、生き別れた双子の姉との「行くの?」「十分甘えさせてもらったから」のやり取りと共にケジメをつけに行く展開が普通にカッコいい。ネオWWWの女ボスさえも翻弄してしまうセクシーな台詞回しも良い。というかゆりこはBEASTでのプライドとの絡みといい言動が全体的にそこはかとなく百合っぽい(?)

 

・26話「氷のアステロイド城」f:id:kumota-hikaru:20230518220000j:image
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 ライプラ(ライカ×プリンセス・プライド)の聖地で今も有名な回。個人的にもかなり好み。

 同じエグゼ5の仲間キャラではあるが登場するバージョンが異なるため共演してない二人をカプらせる凄い展開なのだが、同じ北国出身繋がり・元敵国同士の軍人と姫という関係の取っ掛かりが違和感なく、何よりアステロイドに共に立ち向かっていく中でライカがプライドに惹かれていく過程がさりげなくも説得力のある流れ。

 身分差を理由にプライドを危険から遠ざけ一人で戦おうとするライカだが、プライドは自ら危険に飛び込み体を張って同じ目線で一緒に戦おうとしてくれるし、「名前で呼んでください」や「公にできない秘密の共有」などでプライベート感を出しながらスッと踏み込んでくる。「強い女」の描き方がとてもいい。19話や25話もそうだがStreamはこういったサブキャラ(Stream限定メインキャラ)の魅力掘りがちょくちょく光っている。ここまでやっておいて最後はBSS気味に終わってしまうのだが、ライカは人間が出来ているのでBSSを表には出さないしプライドも友人としてアプローチし続けるため、今後もちょくちょく絡みが見られる美味しい関係性になっている。

 またゲスト敵キャラ(アステロイドエアーマンとコード将軍)もかなり印象的。原作エグゼ2でもアニメ無印でもゴスペルの一番槍の弱ボスだったエアーマン。それがアステロイド化したら一転して国家間関係を揺るがす大活躍を見せている時点で面白い。単なるチンピラではない「地位が高いタカ派の軍人」が「愛国心の暴走」にアステロイドの力を使った結果、国家の重要施設の破壊・妨害電波や実体化を駆使した戦術的な行動・エアーマンのデータを解析しアステロイド軍団を作って軍事利用を目論むなど、アステロイドという「持ち主の願いを叶える力」が権力や野望を持つ人間の手でフルに悪用された場合の恐ろしさを証明する展開になっている。

 

★劇場版「光と闇の遺産(プログラム)」f:id:kumota-hikaru:20230518212821j:imagef:id:kumota-hikaru:20230518212843j:image
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 劇場版は時系列的にこの辺りに入る(フォルテの再登場や熱斗とバレルの初面識などメインシナリオ上の重要イベントを含んでおり、31話以降は劇場版の履修を前提に話が進む)。本来のエグゼ5のラスボスであるネビュラグレイとの対決をやっておく話。

 ソウルユニゾン、プログラムアドバンス、クロスフュージョン、フォルテクロスロックマンとエグゼ特有の要素が1時間弱の尺の中でびっしり詰め込まれており、止め絵ばかりの普段のStreamとはかけ離れた戦闘作画を普段通りのテンポの良い事件進行で楽しめる。サーチソウル(ロックマン)とCFサーチマン(ライカ)は登場するがサーチマン本人が出ない辺りもある意味エグゼ特有ではあるか。

 キービジュアルだとクロスフュージョンを推しているが全体としては電脳世界でのネットナビ戦闘に比重を置いており、現実世界でのクロスフュージョン戦闘は中盤のスパイス程度の扱い。しかしそっちの方が普段のStreamのノルマ的クロスフュージョン戦闘よりクロスフュージョン本来の異質感と爽快感が取り戻されているような気がする。


・31話「シェードマン逆襲」&32話「時空戦争」f:id:kumota-hikaru:20230518213148j:image
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 中盤の一大イベントの前後編。個人的にはStreamの最高傑作の一角に数えたい。

 AXESS最終回でラスボスのCFレーザーマンに惨敗しグロい死に様になってしまった(かに見えた)前作大ボスのシェードマンだったが、野望の王国の柿崎のごときしぶとさを見せ、AXESS最終盤と同様に今回も主人公側の科学技術(時空タワー)を利用して事態を予想外の方向に持っていく。

 とにかくシェードマンの悪のカリスマっぷりが凄い。両腕を失った状態で主人公格二人(CFロックマンとCFブルース)を圧倒、かつての部下(ダークロイドのフラッシュマン&ビーストマン)と同じ姿をしたネオWWW所属アステロイドフラッシュマン&ビーストマンから腕を奪って自分の腕とする、ロックマンの首筋に噛みつきダークロイド因子を注入する、ダークロイドが地上を支配する世界への歴史改変を一度は成功させてしまう、ダークロイド繁栄の野望のために己の命を代償とした計画を実行、自らの勝利を確信したままの最期。

 圧倒的な強さ演出・残虐ファイト演出・ぶっ飛んだスケール演出・格の高さ演出の何もかもが申し分ない。時空移動SF的な状況そのものの面白さもあるが、AXESSでダークロイドが滅んだことでシェードマンとバブルマンしか生き残りがいない状態になってなお己の種族の繁栄の野望を捨てず、ほぼ単独でここまで持っていくシェードマンの不屈っぷりは見上げたものである。最後まで主人公に戦闘で倒されなかった別格感のある敵キャラが多いのもStreamの特徴かもしれない。

 

・39話「クロスフュージョン不能?」&40話「ネオWWW壊滅」f:id:kumota-hikaru:20230518213330j:image
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 Stream中盤を支えてきたネオWWWとの決着回2つ。

 39話はアステロイドがデューオの宇宙テクノロジー由来であるため実体化にディメンショナルエリアを必要としないが主人公サイドやダークロイドは違うという点に着目し、主人公サイドのDエリア発生ギミックを潰してクロスフュージョンを封じる展開。今までなぜやらなかった?についても「衛星による海外からのDエリア転送が不可能な日食の時を狙った」という妙に細かい理由付けがある。

 科学省が機能を停止した状況下でカレー屋に集った旧WWWが立ち上がる展開が熱く、AXESSで(主人公サイドではなく敵側が展開してくるため)恐怖の始まりの象徴だったディメンショナルエリアがStreamでは希望の象徴となっていることも実感させられる。

 そして今まで半ギャグ半シリアスだったネオWWW所属アステロイドが最終的には殺意の高い事件を起こしつつ容赦なく退場していくこと、その際にかつては持ちナビを道具としか思っていなかったネオWWWのオペレーターとの間にいつの間にか生まれていた絆を見せて悲痛な最期を迎えていくのが印象的。

 特に40話のデザートマン&フラッシュマンは、AXESS20話でのダークロイド版デザートマン&フラッシュマンのダークチップ中毒での最期と対比的で、悲痛な敗死ながらもやり切った感が漂う。Be Somewhereのインストが初めて流れるのがこのシーンなのがまた……。

 ネオWWWのアステロイドとしてメインを張ったフラッシュマン・ビーストマン・デザートマンがBEASTでゾアノロイドとして再登場することはなかったのも、アステロイドで描き切った感があるからだろう。ビデオマンは微妙に心残りがあったからか別個体が出てくるが……。

 

・42話「デューオの彗星(ほし)の下に」f:id:kumota-hikaru:20230518213607j:image
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 デューオの紋章を持つエグゼ5キャラのクロスフュージョンを一気に開放し、壊滅したネオWWWと入れ替わりでメイン敵の一角となったダークロイドと戦う回。

 ここからは主人公サイドのCFメンバー・前作ラスボスのDr.リーガル(及び彼がシェードマンのダークロイド因子から新たに生み出したダークロイド)・デューオ勢力の三つ巴となり、終盤に至ってカオスが深まっていく。アステロイドはアニオリであり原作エグゼ5の本来の敵組織はエグゼ4に引き続きDr.リーガルとダークロイドなので、ここにきて原作再現寄りの展開となる。

 今更ダークロイドかと思いきやアステロイドが使わないディメンショナルエリアを実体化手段としてだけでなくバリア・結界として使いこなしてくること、バケットホイールエクスカベーター(※実在する世界最大の自走式重機)をハッキングして都市をまるごと轢き潰すというダークロイド特有の異常な殺意の高さを見せてくることなどから緊張感はそれなり。

 折角のクロスフュージョン披露回なのに戦闘が止め絵ばかりなことに加え、あくまでネットナビ側のデザインをベースに人間オペレーターの要素を抑え正統進化に見えるデザインにしていたCFロックマンやCFブルースに比べると、エグゼ5キャラのCFデザインは人間オペレーターの要素(ネットナビと一致していない身体的特徴)を強く出しすぎて微妙に感じてしまうのは惜しいところか。

 

・46話「ねらわれた紋章」f:id:kumota-hikaru:20230518213710j:image
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 個人的には終盤で一番好きな回かもしれない。

 シャバに出れないキャラが主人公と接点持つ場として旧WWWのカレー屋が機能すること、ダークロイドに乗っ取られたネオWWWビルの最上階を目指す展開がエグゼ2のラスダンを彷彿とさせること、ダークロイド2体をヌルッとデリートするCFエグゼ5キャラの活躍、ダークロイドを束ねるダークロックマンの狡猾さ。

 Be Somewhereのインストをバックに、崩落するネオWWWビルからCFメンバーが各々異なるバトルチップで脱出していくラストは特に印象的。それぞれのキャラの戦い方がちゃんと個性付けされているおかげで多くのキャラを同時に出している意義が感じられる。

 

・49話「きずななき者の戦い」f:id:kumota-hikaru:20230518213817j:image
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 サブタイがオシャレなダークロックマン決着回。「彗星」をキーワードに仄暗い雰囲気で「絆」と「孤独」を語っている様子は後の流星のロックマンを思わせる。

 ダークロックマンは1体で熱斗ロックマンの戦闘パターンを先読みし上回れるという展開からの、「バリアだろ?」「「ドリルアーム、エリアスチール、ホーリードリーム! トリプルスロット・イン!」」(Be Somewhere のインスト)の流れは力業ながら中々熱い。原作エグゼ4でもデューオ戦の直前に存在した「もう一人の自分との戦い」をうまく仕上げている。

 「1+1は2じゃない」という話をしつつ、なんだかんだロックマンとダークロックマンが心の奥底では共鳴し合っていて最後は切ない幕引きになるのも悪くない。

 

・51話「新たなる未来へ」(最終回)f:id:kumota-hikaru:20230518214004j:image
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 王道まっしぐらだったAXESSの最終回と比較すると全体的に不思議な最終回。

 アステロイドの元締めであり明らかに人類を陥れる悪意がありつつ、2話でフォルテが瞬殺されただけでなく48話でもロックマン・ブルース・サーチマン・カーネルの主人公格4人がかりで全く歯が立たず、あまりに別格過ぎてどうやって倒すんだ感が漂っていたスラー。そんなスラーをネビュラグレイ由来のバグを取り込み宇宙に出れるほどに超絶強化されたフォルテが今度は逆に圧倒・デリートする。非常にアニメエグゼらしい。

 原作ゲームや漫画版における宿命のライバルポジに比べ、アニメでは全体的に不遇な扱いだったフォルテだが、ここにきて主人公勢と別格のダークヒーローという立ち位置を手に入れたのが印象深い。フォルテがスラーを背後から貫くシーンはスラーがダークロックマンを背後から貫くシーンと構図が似ており、フォルテと同じように孤高を望んで敗北したダークロックマンのリベンジの意味もあるのかもしれない。光と闇の遺産でロックマンの自己犠牲的な申し出に助けられた経験からロックマンへの微かな情を見せつつも全く違う道を行くフォルテ、これはこれで悪くない。

 Dr.リーガル関連は正直グダグダなのでさておき、フォルテやスラーが最後まで主人公勢に戦闘で倒されなかったのと同様、ラスボスのデューオも最後まで戦闘で超えることが不可能な別格の存在であり続ける(CFメンバー13人を一撃でまとめて戦闘不能にする)。この作品における宇宙的存在はそういうものなのだ。

 しかしかといって戦闘を放棄するのが正解なのではなくその逆、「勝ち目がなくてもデューオの慈悲を拒絶し戦い続けることを選択する意志」「13組のネットナビと人間が互いに庇い合う姿」こそがデューオの正義を揺さぶり和解の突破口を作るという展開。13体のネットナビが各々のオペレーターへの思いの丈をぶつける流れもこれはこれで最終回らしい。まぁ炎山ブルースや燃次ナパームマンを除き個々のペアの積み重ねや物語性が極めて薄いのでいまいち響いてこないのがネックではあるが……。

 そしてバレルの自己犠牲わかり合いクロスフュージョンによる解決。2話の時点で伏線は撒かれておりあらゆる意味で最初から運命付けられていた結末ではあるが、これも中々インパクトが強い。最終的にデューオと和解して終わるのは原作エグゼ4も同じだが、エグゼ4ではデューオを戦闘で撃破した上での和解だったことを考えると、最後までラスボスに力では一切敵わないまま和解に持ち込む終わり方はかなり珍しい。

 しかしデューオに最初に人間への関心を抱かせたのがクロスフュージョンであること、クロスフュージョンは戦闘手段であると同時に結んだ絆の証であるという文脈を踏まえれば、クロスフュージョンを和解に用いることで人間の可能性を証明する展開は十分に必然性を見出だせるものだろう。

 バレルが自ら示した決意と行動とはいえ自己犠牲感が凄いこと、デューオの所業は冷静に考えるとマッチポンプ感が凄いことなど、全体としてスッキリした終わり方かはともかく、独特の筋の通し方を感じる不思議なアニメであった。

 

6/1追記

無料期間は終わってしまったが、AXESSBEASTのまとめも書いたのでこちらに。

kumota-hikaru.hatenablog.com

 

 

 

ニューダンガンロンパV3 ネタバレ再プレイ感想 ~「希望と絶望」の向こうへ~

 Switch版ダンガンロンパシリーズが秋のセールで各作品1500円(通常時でも2000円)になっていたため、最も印象深いシリーズ最終作「V3」を再プレイ。

 膨大なクリア後要素や親密イベントもあるがそれはとりあえず後回し、EDまで通しで読み終えたので感想をまとめておく。

 作品の核心に関わるネタバレを含むため、避ける場合はブラウザバック推奨。「1」「2」のネタバレも一部含む。

(買ったのはV3単品のSwitch版だが、貼り付けるものがなかったためこちらで)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全体のテーマについて

 

 


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・「希望」とは何か。

・結論から言うと僕はこの作品の終わり方に肯定的である。この終わり方でシリーズを完結させたままで良かったと思う。一方で、この結論を額面通りに受け取るのもそれはそれでどうかな、と思っている。

ダンガンロンパというシリーズは「前作の二番煎じにはしない」を毎作強く意識している。「1」で苗木誠というプレーンな主人公のもと「巨大な絶望を希望で越えていく」という王道を一度やり終え、絶望の親玉も「1」の時点で倒して一つのピリオドを打った。

 だからこそ、「希望と絶望」テーマでここから先は何をするのかという課題に直面した。「2」は「1」と比較して内向的で陰鬱な作風となった。「1」の主人公達も味方寄りのポジションで再登場するものの、「2」のキャラと完全には利害が一致しない。最後の結論は「希望も絶望も肯定し、両方を抱えて未来へ向かう」というものだった。

 そしてこの「V3」。「1」より「2」に近い内向的な作風でありつつ、6章で「2」の展開パターンからも外れた。最終的な結論は「希望も絶望も否定し、既存のルールを終結させる」。そして超絶自虐のセルフシリーズ否定だった。

・改めてプレイして思ったこととして、「ハッピーエンドとバッドエンドの二択」「希望と絶望の二択」に持ち込みたくない、という意志を強く感じた(これは匂わせとかいうレベルではなくそのものズバリそう言っている)。これは普通に理解できる。前作の二番煎じに甘んじない志があるなら当然だろう。

・一方で、「希望」のレンジをどう取っているのか(希望と絶望の二択を拒否して主人公たちが打ち出した主張。外の世界全て・今までのシリーズ全てを敵に回してでも仲間たちの死を嘘にしたくないという意志。これはこれで彼らなりの「希望」ではないのか?)。

 最終的に言い出すのが「フィクションだって世界を変えられるんだ」ならやはり、というかだからこそダンガンロンパには意味があったのでは?

 等、どこまで製作側の中で考えが整理されているのか怪しい部分は多々ある。だからこの結論を額面通りに受け取るのも危険かなと思った。

・個人的に惹かれたのはそれよりも「嘘」というテーマを貫徹したこと。「謎のままにしておいた方が面白いこと」を最後まで謎のままにし、世界観の神秘性と可能性を保とうとする姿勢だった。後述する王馬小吉のキャラ性もそうだし、物語全体の真相も然り。

 6章でのラスボスのオーディション関連の説明はプロローグの描写と露骨に矛盾しており、そのことがエピローグでわざわざ指摘もされていた以上、ラスボスの説明も嘘を含んでいるのはほぼ確実。本当は「1」「2」の世界観と地続きだったのかもしれないし、地続きでないとしてもコロシアイをリアルフィクションとして消費する世界ではどうもなさそう。

 それらを全て謎のままにして可能性を残し、そして謎を謎のままにすること自体を肯定する姿勢が非常に肌に合った。

・僕がこの「終結」を受け入れられたのは、ダンガンロンパのセルフシリーズ否定でありつつダンガンロンパをやり切った、完全燃焼した感がしっかり得られたからでもある。

 V3という作品は、他のキャラの犠牲を礎にして(悪い言い方すればメタ的には他のキャラを生贄にして)強くなった主人公の描写にシリーズで最も気合い入った作品でもある。

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 これは最終的な主張として出てくるセルフシリーズ否定と自己矛盾を起こしていると言ってもよく、やはりどこまで製作側が自覚的なのか怪しい部分はある。

 だが個人的にはだからこそ「これで終わりでもいい」、6章前半までの熱い流れと最原終一周りの「真の主人公」ギミックで「ダンガンロンパをやりきった」「完全燃焼した」と思えた。

・なんとなく全体通して感じたこととして、セルフシリーズ否定とはまた別に、「希望は前に進むんだ!」的なメッセージへのセルフ懐疑、「俺たちは真っ直ぐじゃなくていい」「本質的に前を向いてさえいれば屈折してたっていい」的な思考が作品全体に漂っているように感じた。

 1章での「無理だとわかってる状態での諦めるなはしんどいだけ」に始まり、2章クロの「諦められずプライドを捨てて逃げる」という行為を最原や百田が否定しなかったこと、嘘つきの王馬や陰キャの最原だけでなく牽引力があるタイプの赤松や百田も嘘や隠し事を否定しない(なんなら積極的に使う)こと。

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 弱いままでいいとは言わない(いつか直面する問題はどこかで容赦なく突きつけるし、助けてくれた人もどこかで容赦なく居なくなる)一方、常に正面から立ち向かえとも言わないこと。

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 そして、「何もかも一人で背負い込もうとするな」「仲間を頼れ」と最後まで最原に言い続けた百田自身が、誰よりも苦しいことを一人で背負い込み続けていたこと。

・最終的に「希望なんかがあるからいけないんだ」「僕はこの希望を否定する」とまで言っているが、実際のところはそう言った方がキャッチーだからそう言ってるだけで、作品全体の傾向としては希望の懐疑ではあっても希望の否定ではないのでは、と感じた。

 1では「希望」、2では「未来」、V3では「終結」とそれぞれ異なるキーワードを使っているが、最終的に(1の最後の裁判前のモノクマの)「明けない夜はないよ…真っ暗な朝だけどね! 止まない雨はないよ…干ばつ状態になるけどね!」を叩きつけた上で、それでも主人公たちが自分なりの結論を出し、未来が約束されていない暗闇の荒野へ踏み出すという終わり方は全ての作品で共通している。

 

 

王馬小吉について

 

 


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・王馬小吉というキャラは個人的に、自分の中での悪役の理想型の一つ(悪役ではないと考える人もいるかもしれないが、僕はやはりこのキャラの基礎は「悪役」だと思う)。

・「2」の狛枝凪斗に対応するトリックスターポジションだが、狛枝とは違ってガチめに怖く描かれた顔芸が沢山出てくるのがこのキャラの本質をよく現している。

 ホラーの文脈を含んだキャラであり、何が嘘で何が真実か「わからない」から生じる恐怖と神秘性をコンセプトに持っているということ。そして何よりそれを最後まで貫き、「嘘の体現」と作中で評された通り、最後まで誰にも彼の正体を掴むことができなかったこと。

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・「底知れなさ」を保ったまま駆け抜けていった悪役が好き。作品全体のテーマが「嘘」で、最後まで解けない世界観の謎が残ったのと同様、「嘘つき」を体現する王馬にも最後まで数々の謎が残っている。

 3章の「立場上春川の正体を知ってた」発言は嘘なのか真実なのか、「人を殺さない・笑える犯罪」という「ラスボスから与えられた設定」と実際の王馬の行動が乖離していたのは何故なのか、なぜ研究教室があんな場所にあって天海の生存者特典にも載っていなかったのか、ラスボスや天海との間に劇中で明かされていない関係があるのでは、等。

・個人的に、王馬について「本当は良い子」解釈はしたくない。

 もちろんそう解釈される余地を製作側が意図して作っているのは確かだ。しかし間違いなく彼の本音と言えそうなシーン(1章処刑前、4章処刑後に最原に突き離された時の反応、5章の……)に一貫するものが何かを考えてみると、王馬の根底にある動機は結局、ごくシンプルである意味子どもじみた「つまらなくないことがやりたい」「遊びたい」なのではないか。ただ「遊ぶこと」に対して徹底的に本気なだけだ。4章で犠牲にした二人に対しても良心の呵責など持っていないし、持っていたらつまらないと思う。

 ただ、結局何が本心なのか誰にもわからない神秘性こそが魅力のキャラであるため、そこをはっきりして欲しいとは思っていない。

・この手の「善悪は関係なく自分の考える面白いことがやりたいだけ」系トリックスターは、実際に客観的に見ても「面白い事件」、「仕組んだ人物の頭の良さと狂気的な“動機”を感じられる事件」を起こし続けられたかに懸かっていると思う。

 2の狛枝も1章と5章、特に5章で絶大なインパクトを残した。王馬の場合は4章で周りのキャラ及びプレイヤーの度肝を抜き、5章の命を使ったギャンブルで悪役にも関わらず自らの希望を証明し、最後までホラー顔芸と神秘性のヴェールを取らずに勝ち逃げした。

 4章では「善悪に囚われないトリックスターだからどこまでも悪意的になれる」という一面、5章では「善悪に囚われないトリックスターだから既存の対立構図の外に出ることが簡単にできてしまう」という一面を示したと言える。

ダンガンロンパの事件は「骨子はシンプルだが発想の盲点を突いてくる」「関わってくるキャラの“動機”に重点を置く」傾向が強い。

 「殺そうとしたのは被害者で返り討ちに遭った」「失敗した計画に別の人物が便乗した」「被害者自身が自らの死を計画に組み入れていた」等、一つの事件で複数のキャラの“動機”が絡み合うこともしばしば。事件を仕組んだ人物=クロ(実行犯)とは全く限らない。それは事件の内容を興味深く面白くするためであると同時に、事件の真相と解き明かし過程がキャラクターの自己表現も兼ねているためだ。

 各事件に関わってくるキャラの“動機”(必ずしも殺意とは限らない)は、各キャラの“願い”の言い換えとも言えよう。そしてそれを解き明かす過程で、探偵役とクロ(またはクロでないが様々な“動機”から探偵役と対立するキャラ)の願いと願いのぶつかり合いが描かれる。

・その上で、2-5の狛枝とV3-5の王馬は仕組んだ事件を通して完璧に自らの希望を表現しきって駆け抜けていった感が強い。動機とトリックが連動した命がけのギャンブル。悪辣なトリックスター悪役にも関わらず、自らの命の使い道を見つけて願いを叶えていった魔法少女のごとき物語的爽やかさがある。

 だからこそ、4章の時点では王馬を嫌っていた最原も、5章の事件を通して「嘘を体現した存在」と王馬を認め、「嘘の肯定」「命を使う」「ルールを利用してルールに叛逆する」という王馬の要素を(明確にそうは言わずとも)受け継いで最後の戦いに向かっていったのである。

 

 

最原終一について

 

 


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・本当の意味で「大切な人や恩人の死を無駄にしない」とは、「受け継ぐと同時に超えていく」「対等になる」ことだと教えてくれる主人公。

・赤松が主人公のままだったらV3はいつも通りの希望vs絶望の二択で終わっていたのではないかという意見を見たことがある。

 赤松は赤松で漆黒の意志めいたものを持った主人公だし、そうなる確信があるわけではない。だが6章でラスボスに「所詮は弱かった探偵」と評されてからの、「今でも僕は弱い。仲間の支えがなかったら何もできなかった」「でも、弱くて迷うからこそ“希望”の残酷さに気付くことができたんだ」を見ると、確かに製作側の意図としてもそういうものはあるのだろう。

 自らが探偵であることに自信を持てずにいた陰キャで、赤松や百田のような人を引っ張る牽引力をずっと持っておらず、「本来は主人公ではなかったはずの主人公」だからこそ、希望vs絶望の二択の向こうにたどり着くことができたという意図が。

・弱かった探偵の陰キャ主人公といっても、推理力は最初から高いし行動力もある(「時に手段を選ばない」も陰キャ主人公っぽい個性だと思う)。赤松や百田の背中押しを必要としつつも、毎回なんだかんだ事件に決着をつけて周囲からの信頼を勝ち取っている。

 背中を押してくれる仲間がいるから悲しみにも立ち向かえる。3章まではそうして少しずつ1章の悲しみから立ち直り、自分に自信を持ち始め成長していく物語だった。4章の捜査までは毎回異なるパートナーと一緒に捜査をしていた。

 だが、この作品は「いつか直面する問題」をどこかで容赦なく突きつけてくる。赤松の言葉に従い真実に立ち向かう探偵という自らの個性と、百田の「信じたいから信じる」やり方が常に一致するとは限らないという、当然と言えば当然の問題。

 ずっと誰かの背中を追いかけているままではいられない。4章の裁判からは孤独な戦い、自立の戦いだった。

 引用させていただく。

https://ameblo.jp/f-m-hollow/entry-12448265192.html

百田はゴン太が犯人だという可能性を「話し合う価値すらねー!」と断じます。

最原は信じるか信じないかだけでは今回は勝てないと思っている。

話し合いだけはするべきと主張。

王馬は最原が自分の意見に賛同していると勘違い。

探偵として立ち直れたのは百田のお陰なのに、そのせいで探偵として“疑う”気持ちを強くしたとか語ります。

泣きながら訴えるゴン太。

此処でキーボが話し合いだけはするべきだと最原の意見に賛同。

まだ、百田は意地を張って王馬の狙いだと喚く。

意見がパックリ割れたと判断したモノクマがお待ちかねの“変形裁判場”を発動させる。

 

尚も続ける王馬に限界が来たのか百田が「もうやめろっ!!」と絶叫。

「オレはテメーみたーに胸クソ悪い真似までして、

生き残りてーとは思わねーんだよ。」と大問題発言。

尚も王馬は口撃を止めません。

春川が参戦して不穏な空気に。

彼女はマジで殺せてしまいますからね...

まだ「知らない」「わからない」しか言わないゴン太。

此れに最原が違和感を覚える。

ゴン太が『わからない』と言い出したのはプログラム世界からログアウトした後。

プログラム世界で何らかの異変に襲われた可能性が浮上。

アバターに関するエラーが関係していると思われる。

其の肝心のエラーとは...

 

最原は知っています。

屋上から館の外に直接降りる方法を...

その時のゴン太の「・・・え?」は泣きそうになります。

プログラム世界での記憶が無いので、百田のフォローに自分が犯人ではないという喜びからの絶望...

推理をしている最原の苦悶の表情にも思う所があります。

「・・・終一、テメーはどっちの味方だ。」と百田。

助手じゃなかったのか?と理不尽な事を言い出す百田。

ちんけな推理を打ち破って目を覚まさせてくれるみたいです。

 

百田が沈黙...

王馬が其れこそ鬼の首を取ったようにゴン太を追い詰める。

ゴン太はなんでそんな酷い事をしたのかを気にしていたのですが、王馬が容赦なし。

「だからさ、泣く前にさっさと自分の犯行を――」

 

「・・・やめろ。」と最原。

鋭く冷たい声でした。

「お前なんかに・・・やらせない。

ゴン太くんに自分の罪を認めて貰うのは・・・」

「・・・僕がやる。」

悲痛な決意にも似た宣言。

震えました。

 

さっきとは打って変わってとても優しい声でゴン太にもう1度事件を振り返って説明するから納得できたら終わりにさせてくれと言います。

号泣しながらゴン太が其れを了承。

 V3という物語全体のターニングポイントが4章だ。

 「テメーを信じてるぜ」「いつでもオレを頼れよ」とずっと言っていたにも関わらず、いざ最原が自分の意に反する行動を始めると怒り出してしまった百田の生々しい欠点が描かれた回でもある(このことがあってもなお「テメーは一人じゃねえんだ」「仲間を頼れよ」と最後まで最原に言い続け、その実ずっと苦しいことを一人で背負い込み隠し事を続けていた百田からは、全体的に「父親っぽさ」を感じる)。

 そしてそんな百田を尊敬しつつも自分の頭で考えることを決して放棄していない、真実に立ち向かう探偵という自らの個性を忘れていないのが最原だった。支えになってくれた百田をも超えて自らの道を見つけていくための戦いがここから始まる。

 辛い真実と向き合うこと、クロにしたくない人をクロにすることを強いられるのは1章と同じだが、4章では背中を押してくれる人がいない。むしろ敵に回っている、かろうじて地味強のキーボが味方してくれたくらい。

 人と人が完全にわかり合うことは不可能だし、助けてくれた人もいつかはいなくなる。最終的にはどこかで自力で結論を出さなければいけない。弱さを否定しないのと同時に、そこから逃げることも良しとしない。

 それが4章から5章にかけての流れの根底にあるものだと思う。5章もやはり最原にとって孤独な戦いであり、王馬及び百田との決着、そして孤独な戦いの中で最終的に何を信じるかが試される局面だった。

https://ameblo.jp/f-m-hollow/entry-12453793968.html

すべての真実とその目的がわかった超高校級の探偵。

自身の推理を信じ、百田解斗を信じている。

ここから先は推理ではなく、探偵じゃない最原終一として百田をどこまで信じるか...

投票の前に最後の話し合いを提案する。

どうしてもみんなに言っておきたい事があるから付き合って貰うと強引に行きます...

 

―ノンストップ議論(嘘コード)

 

最原提案で始まった議論。

エグイサルの正体を話し合うのですが...

「王馬が死んだ」という事を偽証します。

死体発見後に王馬を目撃して、嘘を吐かないと皆殺しにすると脅されて、今まで嘘を吐いてたという筋書きです。

百田が皆を陥れるような真似をする訳がない、きっと救う為に命懸けで学級裁判を台無しにしようとしている。

百田がやろうとしている事を信じると決めたみたいです。

みんなに百田に投票しないように促す最原。

静観していたエグイサルが口を開きます...エグイサルに口があるかは解りませんが。

「もういい!やめろ!」と百田の声。

「これで終わりにしようぜ」とエグイサルから降りる百田解斗。

もしみんなが間違えてモノクマが正解してしまったらおしおきを受けてしまう...

そんな事はさせられないと姿を現しました。

最原の推理を褒めつつ、王馬を殺したのは自分だから絶対に間違えるなと皆に言い、モノクマに投票タイムを促します。

 

事情の説明が終わり、最後に最原に謝りたいと百田。

今までみんなを救ってきたのは最原の探偵としての能力。

そんな最原があまりにもカッコいいから悔しくてついてきつく当たったと嫉妬していた事を告白します。

「悪かったな・・・」が何か切ないです。

然し最原は否定します。

百田が『責任はすべてオレが負う』と言ってくれたから自信を持てた。

百田が声を掛けてくれたから立ち向かえたと言ってる最中...

 

 5章の裁判における最原の最後の偽証は、初見時「真実を全員の前で明らかにした後にそんなことをしても無駄なのでは……」と思ったし、作中でもその場にいた誰も真に受けていないのだが、改めて見ると百田との決着はこれ以外にありえなかったと思う(実際、結局のところこの行動が百田の姿と真意を引きずり出す結果になっている)。

 4章での百田との衝突を経た上で、それでも百田がみんなを想っていることを信じてる、百田の「信じたいから信じる」を大切にしたいという姿勢。

 ただ単に百田の行動をそのままなぞろうとするのではなく、真実を求める探偵という自らの個性を根底に置いた上で、赤松に言われた通り真実から逃げずにきちんとたどり着き、その上で百田の「信じる」要素によって真実の先にある運命を選び取ろうとする。

 6章では赤松も百田も王馬もいなくなってしまったが、最原がラスボスに戦いを挑むために開いた学級裁判には赤松・百田・王馬の全員のリベンジの要素があり、後半の「真実にたどり着いた上でその向こうに手を伸ばす」戦いはやはり5章までの文脈の延長上で、そして赤松や百田と同じセリフを今度は自分が仲間たちにかける側になる(ここで口にするセリフは赤松や百田が最原を勇気付けるために一対一で言ったもので、仲間たちは赤松や百田の言葉だと知らないのが良いと思う。その方が「自然と受け継いでいる」「いちいち再確認せずとも彼らが常にそばにいる」感が強いからだ)。

 

 

 


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 大切な人や恩人から何を受け取り何を教えてもらったか、自分自身の個性は何なのか。それぞれがキャラの中で整理・言語化されて一貫し、己の強みを保ったまま恩人の要素を自らの血肉にしていくのを繰り返して、「自分だからできること」へと行き着いていく。

 ダンガンロンパは一見して悪趣味の塊のようなシリーズだが、最原終一という主人公を作り上げた方法論は極めて念入りかつ直球の「王道」そのものだったと思う。王道をやり遂げるためにこそ大胆な発想が必要になる。