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ロックマンエグゼStream(劇場版含) 一押し回まとめ

 2023年4月14日、ロックマンエグゼアドバンスドコレクション発売。

 それに伴い、Youtubeで5月末までアニメのロックマンエグゼシリーズ全話が無料配信。

 ゲームのエグゼシリーズの根強い人気と圧倒的な知名度&プレイヤー数に比べると、アニメシリーズの方は完全なアニオリ・独自路線だったこともありマイナーの感が否めない。

 しかしアドコレ発売に伴ってロックマンエグゼまとめ@Wikiにアニメ関連の記述が増えつつあり、以下の4gamer記事のように大胆ながらも練られた原作アレンジの上手さに着目した再評価も現れるなど、アニメについても少しずつ語られる機会が増えつつある。

 アニメエグゼの象徴たるクロスフュージョン(アニオリの融合変身ヒーロー要素)を、エグゼの後継シリーズである流星のロックマンのプロトタイプとして見ることが可能なのも影響していそうだ。

 全話無料公開は間もなく終わってしまうが、またいずれ何らかの形でアニメにスポットが当たる機会もあるかもしれないし、備忘録も兼ねて第2作「AXESS」から第4作「BEAST」にかけての一押し回をまとめていきたい(※第1作の無印はクロスフュージョンが出ないことやアニログでも無料公開が続いていること、第5作の「BEAST+」は10分アニメであくまでオマケの感が強いことから今回は割愛)。

 その中でもアニメシリーズで体感最も人気が高いっぽい(はっきりした指標はないが)、第3作の「Stream」に関してこの記事で独立に取り上げようと思う。Streamだけ先に取り上げるのはおそらく最もメジャーっぽい(劇場版があるのもStreamだけ)ことに加え、作風の傾向も第2作AXESS・第4作BEASTと少し違ったものに感じるため。

 

ロックマンエグゼStreamf:id:kumota-hikaru:20230518174841j:imagef:id:kumota-hikaru:20230518174936j:imagef:id:kumota-hikaru:20230518174956j:image
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 「無印」「AXESS」に続くアニメエグゼシリーズの第3作で、ゲーム版のロックマンエグゼ4・5(特にエグゼ5)をベースにしている。

 まずOPの「Be Somewhere」がシリーズぶっちぎりで有名。作詞作曲がポルノグラフィティの人で歌詞も曲調もインパクトが強く、エグゼの曲と言えばゲーム版含めてこれという人も少なくないっぽい。サイバー感と宇宙感が作品内容にもマッチしているし、OPで流れていない2番以降も「不安」と「希望」を繊細に言語化した印象的な歌詞だ。

youtu.be

 Streamに話を戻すと、全体的な傾向としてはSF色が強い。原作ゲームもSFだが方向性が異なっており、「宇宙からやってきた電脳存在による人類への審判」(エグゼ4ラスボスのデューオ)、「時空移動」(エグゼ5のパストビジョン)といった、確かに原作にも存在はしていたがそこまで大きな扱いではなかった要素を大量のアニオリ設定でシナリオの根幹にまで魔改造している。

 その一方で1話完結色も強い。「デューオの試練をクリアしなければ地球抹殺が実行される」という縦軸は最序盤で提示されるし後半はシリアスが増えるが、基本的には怪人(アステロイドとその持ち主)が愉快な事件を起こして主人公や味方キャラがクロスフュージョンでしばく1話完結のエピソードが多く、全体としてはAXESSBEASTよりギャグに寄せた作風になっている。

 詳しくは後術するが前作AXESSで登場したクロスフュージョン(人間とネットナビの融合)を全アニメシリーズで最も前面に出しているのも特徴である。その弊害として原作変身要素のソウルユニゾンはほとんど出なくなってしまうが、代わりにエグゼ5の味方キャラにアニオリのクロスフュージョンが用意されている。

 「名人さん、ディメンショナルエリアを!」「さんはいらない! ディメンショナルエリア展開!」「シンクロチップ、スロットイン! クロスフュージョン!」のテンプレが確立したのもこの作品。アステロイドの設定と併せ、要するにテンプレ変身ヒーロー要素がシリーズで最も強い。「宇宙」「彗星」がモチーフなのも含めて後の流星のロックマンを思わせる。

 以下、印象的だった話数を個別に。

 (※結末までのネタバレを含みます)

 

 

・2話「地球抹殺」f:id:kumota-hikaru:20230519123756j:image
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 1話と併せて縦軸提示回。

 衝撃的なサブタイが物語る通り最初からクライマックス。ディメンショナルエリア無しで実体化可能な巨大ウィルスで地球抹殺を実行に移すデューオ、デューオの使者に過ぎない存在でありながら原作最強ライバルのフォルテを圧倒してしまうスラー(※アニオリ)と、宇宙からの襲来者が技術も戦闘力も明確に別格の存在として描かれているために緊張感がある。

 正直デューオは所謂「や人愚滅」系な気がしなくもないが、そんなデューオに人間への興味を抱かせたのが前作で登場した「原作に存在しない変身要素」たるクロスフュージョンという展開は中々熱い。結局この話の時点で最終回の幕引きに繋がる伏線は撒かれているし。

 

・3話「アステロイドの脅威」f:id:kumota-hikaru:20230518211813j:imagef:id:kumota-hikaru:20230518211842j:image

 デューオの試練=アステロイド(※過去作でデリートされた敵ボスの残留データから宇宙のテクノロジーで強化再構築された存在)が悪の芽を持つ一般人たちにスラーの手でばら撒かれ、その起こした事件を主人公たちがクロスフュージョンで迎え撃つ、というStreamの基本フォーマット提示回。

 AXESS1話でダークロイド第1号として初登場したビーストマンがアステロイドとしても第1号で立ちはだかり、AXESSではできなかった原作エグゼ3の動物園の動物を暴走させる事件をここにきて再現。大半のアステロイドは登場回で退場するが犬飼とビーストマンは逃げ延びて後にエグゼ3モチーフ悪の組織のネオWWWに合流と、変則的な原作再現を可能にしている。

 人間の悪性との戦いをやる正統派ヒーロー・魔法少女フォーマットを長期的にやっていけるようにしつつ、アニメが原作の発売ペースに追い付いたことで新規ボスのストックが尽きてしまった問題を過去ボスの使い回しで緩和と、完全なアニオリでありつつアステロイドはかなり練られた設定であることが見て取れる。まぁコンセプト上は人間の悪性との戦いと言いつつ実際の話の内容はチンピラとの戦いやヒャッハーとの戦いが大半だが……。

 

・15話「氷の発明で…コフ!?」f:id:kumota-hikaru:20230518212009j:imagef:id:kumota-hikaru:20230518212025j:image

 味方キャラ(炎山、ラウル)のおふざけ要素とゲスト敵キャラ(イワン・コオリスキーとアステロイドのコールドマン)の哀愁が印象的な回。

 原作エグゼ4のコオリスキーはロシア人モチーフだから語尾にコフやチョフを付けるというふざけたキャラ付けに加え、暑着してるのに暑いのが嫌だからという理由で世界中の気象管理システムにハッキングする原作屈指のサイコパス一般人だったのだが、アニメのコオリスキーは(語尾にコフやチョフは同じだけど)原作と逆に、「自分の研究が日の目を見ることなく終わるのが嫌だった」「金が欲しいわけじゃなかった」と、スラーにアステロイドを与えられて暴走した一般人の中では同情の余地がある動機のキャラになっている。

 出てきたのが後の流星のロックマンなら彼にも何らかの救済やフォローがありそうだが(※流星のロックマン1も心に孤独を抱えた一般人に憑りついて電波変換ボスになるFM星人との戦い)、コオリスキーはどことなく同情的な手つきで描かれつつも結局はバッサリ切り捨てられる。そこは作風の違いというものだろう。

 

・19話「幸せを呼ぶ爆発」
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 Streamの中ではぶっちぎり有名で人気が高いと思われる回。アニヲタWikiにこのエピソード単独の項があったりする。アステロイドのナパームマンと花火職人の燃次の出会いを通して、人間の善性が持つ可能性を(珍しく)ちゃんと真面目に証明してしまう。

 メタ的にはアステロイドという設定自体にナパームマンのために用意された側面があると思われる。原作エグゼ5の仲間キャラのうち新規キャラは3分の1だけで他は過去作からの再登場、特にエグゼ2出身が多い。すなわちアニメ的にはエグゼ1・2ベースの無印からの再登場が多くなるということだが、ナパームマンは無印でデリートしてしまっている。その再登場と味方化、原作でも謎だった燃次とのコンビ化のために同じ姿の別個体を出せるアステロイドの設定が活かされたというわけだ(まぁ似たようなポジのシャドーマンはDr.ワイリーがヌルッと復活させたが……)。

 要は販促の都合なのだが、販促の都合から生まれた展開をたった1話でここまで感動的に仕上げて作中屈指の人気回にまでしたのは素直に凄いと思う。

 

・22話「デカオ、カレーなる転身」f:id:kumota-hikaru:20230518212256j:image
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 エグゼ1の初期WWWメンバーがアニメでは無印の後半以降(マハ・ジャラマがインド人モチーフというだけの理由から)カレー屋になって準レギュラー化・味方化する話は有名だが、そこにレギュラーガキ大将キャラのデカオ&ガッツマンやエグゼ5仲間キャラのディンゴ&トマホークマンも合流し、デカオに至っては義務教育や労働法ガン無視でプロのカレー屋として成功してしまう。原作を知ってるとどこから湧いた発想なのか分からなすぎて凄い。

 かつて熱斗に抱いていたライバル意識はどこへやらカレー屋として安定してしまったデカオや旧WWWメンバーに、デカオの弟やネオWWWの砂山が「あいつは腑抜けやがった」の視線を向け、それに対しデカオや旧WWWメンバーは実は最初からネオWWWを追う独自の目標を持っていたしそのために主体的に行動できるという回答を示す展開もあるので、ぶっ飛んだギャグをやりつつ話の筋としてもちゃんとしておりストレスがない。

 デカオや旧WWWのカレー屋はこれ以後主人公たちのたまり場・帰るべき日常の象徴となるだけでなく、Dr.ワイリーやダークミヤビといった裏の人間と接点持つ場所としても機能するのがなんか良い。

 

・25話「戦慄のバースディプレゼント」f:id:kumota-hikaru:20230518212553j:imagef:id:kumota-hikaru:20230518212611j:image

 頭のおかしいギャグからシリアス展開へシームレスに移行するStreamの作風を象徴する回。前半で妙な仲良し感や主人公との馴れ合い感を見せたと思いきや後半で一転して総力戦を挑み追い詰めてくるネオWWWの丁度良い悪の組織感と、悪の女幹部じみたビジュアルと立ち位置だったのが味方側のお助けキャラになると凄まじく頼りになるゆりこの魅力が光る。

 前作AXESSでは終盤まで悪役だったのが行き場を失い自分の道を決めかねていたゆりこ(※一応原作にもいるはいるがほぼアニオリ同然のキャラ)が、生き別れた双子の姉との「行くの?」「十分甘えさせてもらったから」のやり取りと共にケジメをつけに行く展開が普通にカッコいい。ネオWWWの女ボスさえも翻弄してしまうセクシーな台詞回しも良い。というかゆりこはBEASTでのプライドとの絡みといい言動が全体的にそこはかとなく百合っぽい(?)

 

・26話「氷のアステロイド城」f:id:kumota-hikaru:20230518220000j:image
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 ライプラ(ライカ×プリンセス・プライド)の聖地で今も有名な回。個人的にもかなり好み。

 同じエグゼ5の仲間キャラではあるが登場するバージョンが異なるため共演してない二人をカプらせる凄い展開なのだが、同じ北国出身繋がり・元敵国同士の軍人と姫という関係の取っ掛かりが違和感なく、何よりアステロイドに共に立ち向かっていく中でライカがプライドに惹かれていく過程がさりげなくも説得力のある流れ。

 身分差を理由にプライドを危険から遠ざけ一人で戦おうとするライカだが、プライドは自ら危険に飛び込み体を張って同じ目線で一緒に戦おうとしてくれるし、「名前で呼んでください」や「公にできない秘密の共有」などでプライベート感を出しながらスッと踏み込んでくる。「強い女」の描き方がとてもいい。19話や25話もそうだがStreamはこういったサブキャラ(Stream限定メインキャラ)の魅力掘りがちょくちょく光っている。ここまでやっておいて最後はBSS気味に終わってしまうのだが、ライカは人間が出来ているのでBSSを表には出さないしプライドも友人としてアプローチし続けるため、今後もちょくちょく絡みが見られる美味しい関係性になっている。

 またゲスト敵キャラ(アステロイドエアーマンとコード将軍)もかなり印象的。原作エグゼ2でもアニメ無印でもゴスペルの一番槍の弱ボスだったエアーマン。それがアステロイド化したら一転して国家間関係を揺るがす大活躍を見せている時点で面白い。単なるチンピラではない「地位が高いタカ派の軍人」が「愛国心の暴走」にアステロイドの力を使った結果、国家の重要施設の破壊・妨害電波や実体化を駆使した戦術的な行動・エアーマンのデータを解析しアステロイド軍団を作って軍事利用を目論むなど、アステロイドという「持ち主の願いを叶える力」が権力や野望を持つ人間の手でフルに悪用された場合の恐ろしさを証明する展開になっている。

 

★劇場版「光と闇の遺産(プログラム)」f:id:kumota-hikaru:20230518212821j:imagef:id:kumota-hikaru:20230518212843j:image
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 劇場版は時系列的にこの辺りに入る(フォルテの再登場や熱斗とバレルの初面識などメインシナリオ上の重要イベントを含んでおり、31話以降は劇場版の履修を前提に話が進む)。本来のエグゼ5のラスボスであるネビュラグレイとの対決をやっておく話。

 ソウルユニゾン、プログラムアドバンス、クロスフュージョン、フォルテクロスロックマンとエグゼ特有の要素が1時間弱の尺の中でびっしり詰め込まれており、止め絵ばかりの普段のStreamとはかけ離れた戦闘作画を普段通りのテンポの良い事件進行で楽しめる。サーチソウル(ロックマン)とCFサーチマン(ライカ)は登場するがサーチマン本人が出ない辺りもある意味エグゼ特有ではあるか。

 キービジュアルだとクロスフュージョンを推しているが全体としては電脳世界でのネットナビ戦闘に比重を置いており、現実世界でのクロスフュージョン戦闘は中盤のスパイス程度の扱い。しかしそっちの方が普段のStreamのノルマ的クロスフュージョン戦闘よりクロスフュージョン本来の異質感と爽快感が取り戻されているような気がする。


・31話「シェードマン逆襲」&32話「時空戦争」f:id:kumota-hikaru:20230518213148j:image
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 中盤の一大イベントの前後編。個人的にはStreamの最高傑作の一角に数えたい。

 AXESS最終回でラスボスのCFレーザーマンに惨敗しグロい死に様になってしまった(かに見えた)前作大ボスのシェードマンだったが、野望の王国の柿崎のごときしぶとさを見せ、AXESS最終盤と同様に今回も主人公側の科学技術(時空タワー)を利用して事態を予想外の方向に持っていく。

 とにかくシェードマンの悪のカリスマっぷりが凄い。両腕を失った状態で主人公格二人(CFロックマンとCFブルース)を圧倒、かつての部下(ダークロイドのフラッシュマン&ビーストマン)と同じ姿をしたネオWWW所属アステロイドフラッシュマン&ビーストマンから腕を奪って自分の腕とする、ロックマンの首筋に噛みつきダークロイド因子を注入する、ダークロイドが地上を支配する世界への歴史改変を一度は成功させてしまう、ダークロイド繁栄の野望のために己の命を代償とした計画を実行、自らの勝利を確信したままの最期。

 圧倒的な強さ演出・残虐ファイト演出・ぶっ飛んだスケール演出・格の高さ演出の何もかもが申し分ない。時空移動SF的な状況そのものの面白さもあるが、AXESSでダークロイドが滅んだことでシェードマンとバブルマンしか生き残りがいない状態になってなお己の種族の繁栄の野望を捨てず、ほぼ単独でここまで持っていくシェードマンの不屈っぷりは見上げたものである。最後まで主人公に戦闘で倒されなかった別格感のある敵キャラが多いのもStreamの特徴かもしれない。

 

・39話「クロスフュージョン不能?」&40話「ネオWWW壊滅」f:id:kumota-hikaru:20230518213330j:image
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 Stream中盤を支えてきたネオWWWとの決着回2つ。

 39話はアステロイドがデューオの宇宙テクノロジー由来であるため実体化にディメンショナルエリアを必要としないが主人公サイドやダークロイドは違うという点に着目し、主人公サイドのDエリア発生ギミックを潰してクロスフュージョンを封じる展開。今までなぜやらなかった?についても「衛星による海外からのDエリア転送が不可能な日食の時を狙った」という妙に細かい理由付けがある。

 科学省が機能を停止した状況下でカレー屋に集った旧WWWが立ち上がる展開が熱く、AXESSで(主人公サイドではなく敵側が展開してくるため)恐怖の始まりの象徴だったディメンショナルエリアがStreamでは希望の象徴となっていることも実感させられる。

 そして今まで半ギャグ半シリアスだったネオWWW所属アステロイドが最終的には殺意の高い事件を起こしつつ容赦なく退場していくこと、その際にかつては持ちナビを道具としか思っていなかったネオWWWのオペレーターとの間にいつの間にか生まれていた絆を見せて悲痛な最期を迎えていくのが印象的。

 特に40話のデザートマン&フラッシュマンは、AXESS20話でのダークロイド版デザートマン&フラッシュマンのダークチップ中毒での最期と対比的で、悲痛な敗死ながらもやり切った感が漂う。Be Somewhereのインストが初めて流れるのがこのシーンなのがまた……。

 ネオWWWのアステロイドとしてメインを張ったフラッシュマン・ビーストマン・デザートマンがBEASTでゾアノロイドとして再登場することはなかったのも、アステロイドで描き切った感があるからだろう。ビデオマンは微妙に心残りがあったからか別個体が出てくるが……。

 

・42話「デューオの彗星(ほし)の下に」f:id:kumota-hikaru:20230518213607j:image
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 デューオの紋章を持つエグゼ5キャラのクロスフュージョンを一気に開放し、壊滅したネオWWWと入れ替わりでメイン敵の一角となったダークロイドと戦う回。

 ここからは主人公サイドのCFメンバー・前作ラスボスのDr.リーガル(及び彼がシェードマンのダークロイド因子から新たに生み出したダークロイド)・デューオ勢力の三つ巴となり、終盤に至ってカオスが深まっていく。アステロイドはアニオリであり原作エグゼ5の本来の敵組織はエグゼ4に引き続きDr.リーガルとダークロイドなので、ここにきて原作再現寄りの展開となる。

 今更ダークロイドかと思いきやアステロイドが使わないディメンショナルエリアを実体化手段としてだけでなくバリア・結界として使いこなしてくること、バケットホイールエクスカベーター(※実在する世界最大の自走式重機)をハッキングして都市をまるごと轢き潰すというダークロイド特有の異常な殺意の高さを見せてくることなどから緊張感はそれなり。

 折角のクロスフュージョン披露回なのに戦闘が止め絵ばかりなことに加え、あくまでネットナビ側のデザインをベースに人間オペレーターの要素を抑え正統進化に見えるデザインにしていたCFロックマンやCFブルースに比べると、エグゼ5キャラのCFデザインは人間オペレーターの要素(ネットナビと一致していない身体的特徴)を強く出しすぎて微妙に感じてしまうのは惜しいところか。

 

・46話「ねらわれた紋章」f:id:kumota-hikaru:20230518213710j:image
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 個人的には終盤で一番好きな回かもしれない。

 シャバに出れないキャラが主人公と接点持つ場として旧WWWのカレー屋が機能すること、ダークロイドに乗っ取られたネオWWWビルの最上階を目指す展開がエグゼ2のラスダンを彷彿とさせること、ダークロイド2体をヌルッとデリートするCFエグゼ5キャラの活躍、ダークロイドを束ねるダークロックマンの狡猾さ。

 Be Somewhereのインストをバックに、崩落するネオWWWビルからCFメンバーが各々異なるバトルチップで脱出していくラストは特に印象的。それぞれのキャラの戦い方がちゃんと個性付けされているおかげで多くのキャラを同時に出している意義が感じられる。

 

・49話「きずななき者の戦い」f:id:kumota-hikaru:20230518213817j:image
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 サブタイがオシャレなダークロックマン決着回。「彗星」をキーワードに仄暗い雰囲気で「絆」と「孤独」を語っている様子は後の流星のロックマンを思わせる。

 ダークロックマンは1体で熱斗ロックマンの戦闘パターンを先読みし上回れるという展開からの、「バリアだろ?」「「ドリルアーム、エリアスチール、ホーリードリーム! トリプルスロット・イン!」」(Be Somewhere のインスト)の流れは力業ながら中々熱い。原作エグゼ4でもデューオ戦の直前に存在した「もう一人の自分との戦い」をうまく仕上げている。

 「1+1は2じゃない」という話をしつつ、なんだかんだロックマンとダークロックマンが心の奥底では共鳴し合っていて最後は切ない幕引きになるのも悪くない。

 

・51話「新たなる未来へ」(最終回)f:id:kumota-hikaru:20230518214004j:image
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 王道まっしぐらだったAXESSの最終回と比較すると全体的に不思議な最終回。

 アステロイドの元締めであり明らかに人類を陥れる悪意がありつつ、2話でフォルテが瞬殺されただけでなく48話でもロックマン・ブルース・サーチマン・カーネルの主人公格4人がかりで全く歯が立たず、あまりに別格過ぎてどうやって倒すんだ感が漂っていたスラー。そんなスラーをネビュラグレイ由来のバグを取り込み宇宙に出れるほどに超絶強化されたフォルテが今度は逆に圧倒・デリートする。非常にアニメエグゼらしい。

 原作ゲームや漫画版における宿命のライバルポジに比べ、アニメでは全体的に不遇な扱いだったフォルテだが、ここにきて主人公勢と別格のダークヒーローという立ち位置を手に入れたのが印象深い。フォルテがスラーを背後から貫くシーンはスラーがダークロックマンを背後から貫くシーンと構図が似ており、フォルテと同じように孤高を望んで敗北したダークロックマンのリベンジの意味もあるのかもしれない。光と闇の遺産でロックマンの自己犠牲的な申し出に助けられた経験からロックマンへの微かな情を見せつつも全く違う道を行くフォルテ、これはこれで悪くない。

 Dr.リーガル関連は正直グダグダなのでさておき、フォルテやスラーが最後まで主人公勢に戦闘で倒されなかったのと同様、ラスボスのデューオも最後まで戦闘で超えることが不可能な別格の存在であり続ける(CFメンバー13人を一撃でまとめて戦闘不能にする)。この作品における宇宙的存在はそういうものなのだ。

 しかしかといって戦闘を放棄するのが正解なのではなくその逆、「勝ち目がなくてもデューオの慈悲を拒絶し戦い続けることを選択する意志」「13組のネットナビと人間が互いに庇い合う姿」こそがデューオの正義を揺さぶり和解の突破口を作るという展開。13体のネットナビが各々のオペレーターへの思いの丈をぶつける流れもこれはこれで最終回らしい。まぁ炎山ブルースや燃次ナパームマンを除き個々のペアの積み重ねや物語性が極めて薄いのでいまいち響いてこないのがネックではあるが……。

 そしてバレルの自己犠牲わかり合いクロスフュージョンによる解決。2話の時点で伏線は撒かれておりあらゆる意味で最初から運命付けられていた結末ではあるが、これも中々インパクトが強い。最終的にデューオと和解して終わるのは原作エグゼ4も同じだが、エグゼ4ではデューオを戦闘で撃破した上での和解だったことを考えると、最後までラスボスに力では一切敵わないまま和解に持ち込む終わり方はかなり珍しい。

 しかしデューオに最初に人間への関心を抱かせたのがクロスフュージョンであること、クロスフュージョンは戦闘手段であると同時に結んだ絆の証であるという文脈を踏まえれば、クロスフュージョンを和解に用いることで人間の可能性を証明する展開は十分に必然性を見出だせるものだろう。

 バレルが自ら示した決意と行動とはいえ自己犠牲感が凄いこと、デューオの所業は冷静に考えるとマッチポンプ感が凄いことなど、全体としてスッキリした終わり方かはともかく、独特の筋の通し方を感じる不思議なアニメであった。

 

6/1追記

無料期間は終わってしまったが、AXESSBEASTのまとめも書いたのでこちらに。

kumota-hikaru.hatenablog.com