こちらの記事の続き。
現行のイベスト等を追っていく過程で、また何かしらの特筆したいテーマが出てきたら追加していく。
①バトルミュージアム 五十鈴れん編
この「スッと自然に出てきてスッと染み入る配慮の質感」こそ、マギレコ最初期からずっとそこに在る横軸話の強みなんだよね……
流れるように察して先回りしてくれて、甘えた側が負い目を感じないようにさえ計らってくれる。
梨花や観鳥さんに典型的に見られる横軸話での“お姉さん”キャラの質感、私(筆者)にとって最も交換不可能性を感じるマギレコの特徴の一つ。
・それはさて置き、れんの話として見ると、
自らの初心に戻ってやりたいことを見つける、周りが教えてくれた優しさを与える側になりたい、自らの経験あっての自分だからできることを見つけたい。
どれも「願いを見つける」魔法少女の物語として極めて王道的な文脈だし、すっきりと理屈は通っている。これらに近い文脈をやろうとして失敗していた感の漂う今年2月のバレンタイン(くろ・月出里関連)のリベンジの印象も受ける。
ただ、最初に挙げた梨花の描写が理屈以上に自らのあり方で「日常の中に自然と存在する優しさ」を体現していたのと比較すると、れんの方はあくまでも理屈オンリーの話という印象がある。
れんの決意を具体化する(具体的にどういう資質を活かして誰にどういう寄り添い方するかを示す)描写やそれを可能にする見通しは特になく、全体としてはそこそこの話という感触。果たして同じ自殺志願者という括りでそこまで一般化できるかor一般化するのは簡単か、もある。
②まさら・こころ花嫁ver関連(あしたの幸せに花束を、まさここMSS)
イベスト(あしたの幸せに花束を)のラストのここさぁ……
最初期のこころとまさらのそれぞれのMSSで触れられた、「相手のどこに惹かれたか」への回帰なんだよね……
最終回で1話の再演するやつ……
・イベストの方はやはり全体的に理屈っぽさに寄り過ぎている感も少しあったのだが、「結婚」というテーマを扱うからこそ「人と人との断絶」「すれ違い」に焦点を当てる必要があるのは納得するしかないし、上記の通りラストの清涼感がとても良かった。
(同性・異性を問わず)「結婚=幸せ」「結婚=人生のゴール」価値観にならないようにしつつ、結婚を否定するわけでもなく当人たちの努力によって断絶を超えていける可能性を示す。ヘテロ規範っぽくなるのは当然避けるしソロウェディング等にも触れておく。簡単なようでこれだけのことを全部こなすのにはかなり繊細な手つきが求められると思う。
・その上で、どちらかというとイベストよりもMSS(まさここ花嫁verのMSS)を語る方に主眼を置きたい。イベストが「よくできた最終回っぽい」話なのを踏まえた上で、その後日談のMSSは「最終回じゃない」ことを示す話だし、イベストと同じテーマを扱いつつも「あり方で語る」ことをより重点しているからだ。
まぁ勿論あざとい要素の多さもあるが……
序盤ずっとこういうイチャつきとぶっ飛んだギャグに振った話をしていたのが(勿論これはこれで楽しいし筆がノってるのも感じるしこれが無いとメリハリつかない)、気付けばイベストと同様に「人と人との断絶」「すれ違い」の話になっているところに根っからの真面目さを感じる。
・まさここMSSの特筆すべき点は、「ペア同士の横の繋がり」がかなり有効に活かされているところである。
個々のペアが独立にイチャイチャして既視感のある光景見せてるだけ、ではなく、今まで絡みのなかったペア同士の横の繋がりを個々のペアの物語性活かしながら新たに開拓していき、その中から個々のペア内の関係性の意義も再発見していく方向性。
この場合、同じ「どれだけ仲の良い二人の関係でも必ず存在する断絶」というテーマを、主役のまさここと去年10月のハロウィンで登場した新キャラの壮晴で共有させている。
気持ちが逸りがちなこころと思ったことを本当にそのまま言うまさらで(結婚を模したイベントを経た)今でもすれ違いに直面し続けるが、だからこそ付き合い始めで皆に見守られている壮月晴海と同じ目線で同質の問題に向き合えるという構図に落とし込み、それぞれのペアの閉じた関係だけだと描きにくかった次元へスムーズに話を進めているのだ。
思ったことを(特段の配慮を加えず)本当にそのまま口に出すまさらの性質は必然的にすれ違いの原因になるが、こころがまさらに惹かれたのもまさらのそういう個性である以上、二人の個性を保ったままその二人なりの最善を見つけることで断絶を乗り越えていくしかない。お互いの断絶への自覚と具体的な歩み寄りの意志がちゃんと描かれている。
また、
同じ「断絶」というテーマについて、まさここと壮晴に加えあやしずの物語性もさりげなく活かされている。
相手の好きなものがわかるか競争であやかが壮月と同じ間違え方をしたのはわざととも天然とも取れるが、どちらにせよ(互いの断絶にかなり自覚的でなお一緒にいる擬似幼馴染的な関係なので)間違えることをお互い気にしないし気にする必要がない。
どれだけ強度のある関係でも相互不理解はあって当然だし関係の形は人それぞれなので、相手のことがわかるか競争には意味がない。そういう全体の結論を自分たちのあり方で先取りして暗示している(ラストでも率先してまさここに花を持たせようとしている)。
それまでの二人の物語で積み重ねたものを今までとは違う形で外向きに活用する。ここにもペア同士の横の繋がりを重点している効果が出ている。
「同じテーマを共有できる対等な友人」兼「一致団結して危険から遠ざけ守るべき存在」という、この話全体を通しての壮晴のポジションは、「それぞれの魔法少女が個人として背負ったテーマの深掘り」と「魔法少女が持つ、日常を守ろうとするヒーローとしての側面の強調」の両方に一役買っていたと思う。
マギアレコードはあくまでも魔法少女の物語であり魔法少女を大切にする話であるべきなので、魔法少女をさしおいてこの二人を単体でネタにしてどうというのは無いのだが、サブストーリーにおける緩やかな縦軸にもなり得るこういう役回りであれば、従来と違い非魔法少女一般人キャラにグラを付けた意味もしっかり感じられる。
全体として日常性に重点を置いたマギレコの横軸話の新たな可能性を感じられるエピソードだった。